2010 Fiscal Year Annual Research Report
新しい非線形分光計測法による界面超高速ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
09F09503
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田原 太平 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ジャフーレ アラムモンダル 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 外国人特別研究員
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Keywords | 非線形分光 / 先端計測 / 界面 / 振動分光 / 脂質 |
Research Abstract |
受け入れ研究室である理研・田原分子分光研究室が開発したヘテロダイン検出マルチプレクス振動和周波分光(HD-VSFG)を用いて研究を行った。VSFG分光法では、赤外光(振動数ω_1)と可視光(振動数ω_2)を界面に照射し、界面から発する和周波信号(振動数ω_1+ω_2)を検出する。この和周波信号は、赤外光が界面分子の振動準位に共鳴すると強度が増大するので、これを利用して界面選択的な振動スペクトルを測定することが出来る。われわれはこのVSFG測定において、発生する和周波信号を参照光と位相関係を確定して混合することによってヘテロダイン検出(HD-VSFG)測定を実現し、二次非線形感受率の自乗(|χ^<(2)>|)ではなく、二次の非線形感受率そのもの(χ^<(2)>)の実部と虚部のスペクトルの測定を可能にした。脂質膜-水界面は生体膜のモデル系であり、そこにおける水の状態を明らかにすることは生体膜界面の性質を知るうえできわめて重要である。そこでまず、Mondal博士は空気水界面に荷電をもつヘッドグループを有する脂質の単分子膜を作成し、脂質/水界面の振動スペクトル(χ^<(2)>の虚部スペクトル)の測定を行った。その結果、荷電の正負によって界面水のOH伸縮振動のバンドの正負が逆転すること、すなわち界面の水分子の平均的絶対配向が逆転することがわかった。この発見を論文として発表するとともに、さらに複雑なヘッドグループを持つ脂質び脂質/水界面の研究に進み、その振動スペクトルをHD-VSFG法で測定した。これによって双性イオン性ヘッドグループを持つ脂質と水の界面における水分子は複雑かつ特徴的な構造をとっていることがわかった。
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