2009 Fiscal Year Annual Research Report
温度および水分条件がブドウのフラボノイド生合成に及ぼす影響
Project/Area Number |
09F09516
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Research Institution | National Research Institute of Brewing |
Principal Investigator |
後藤 奈美 National Research Institute of Brewing, 醸造技術基盤研究部門, 副部門長
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
POUDEL Puspa Raj 独立行政法人酒類総合研究所, 醸造技術基盤研究部門, 外国人特別研究員
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Keywords | ブドウ / アントシアニン / フラボノイド / 水分ストレス / 気象条件 |
Research Abstract |
わが国では、赤ワイン用ブドウ及び生食用ブドウの充分な着色が得られず、問題となることが多い。ブドウの着色は高温と過剰な水分条件で阻害されることが知られているが、日本の栽培環境で改善すべき点については明らかにされていない。そこで、日本各地のワイナリーから赤ワイン用ブドウメルローのサンプルの提供を受けて分析を行ない、アメダスの気象データ、及び果実成分との関連を重回帰分析した。その結果、アントシアニン濃度(目的変数)に対して7月の降雨量、5-8月の平均気温、及び果汁窒素分(ホルモール窒素)が負の偏相関係数を示し、生育期間の高温条件及び着色開始期の雨と並んで、過剰な窒素施肥が着色不良の原因となっていることが示唆された。なお、水分ストレス(乾燥ストレス)の指標として果汁糖分の安定同位体比δ^<13>Cが知られているが、今回の検討ではδ^<13>Cとアントシアニン濃度に相関が認められなかったことから、この原因及び乾燥ストレスの指標については今後の検討課題としたい。 ブドウのアントシアニン合成系は転写制御因子のVvMybAsによって制御されることが知られているが、VvMybAsのターゲットとなる遺伝子について並びに光が着色に及ぼす影響については理解が不十分である。そこで、赤ワイン用品種ピノ・ノアールとその白色変異体(VvMybAs変異体)であるピノ・ブランを用いて果房の遮光実験を行った。両品種(無遮光区)の網羅的遺伝子発現解析(GeneChip解析)の結果、アントシアニン合成系特異的遺伝子だけでなく、フラボノイド合成系共通の遺伝子にもピノ・ノアールで発現が有意に高いものがあった。従って、VvMybAsがアントシアニン合成系全体の発現を制御している可能性が示唆された。今後は他のアントシアニン合成系の突然変異品種を用いた遺伝子発現解析、並びにこれらの遺伝子発現に対する光の影響を検討する計画である。
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