2011 Fiscal Year Annual Research Report
マダニプロテアーゼインヒビターの機能解明と応用に関する研究
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09F09519
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
辻 尚利 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ALIM MdAbdul 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 外国人特別研究員
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Keywords | マダニ / 節足動物媒介感染症 / 吸血 / 蛋白分解酵素 / プロテアーゼインヒビター |
Research Abstract |
本研究では、吸血によってマダニ中腸に取り込まれた宿主血液の消化及びバベシア原虫の伝播に関与するマダニ蛋白分解酵素の機能解明を推進し、殺ダニ剤による現行防除法に代わる有効で安全性と持続性の高いマダニ防除及び動物・ヒトバベシア症制圧技術を確立する。そのために、蛋白分解酵素の機能を制御するマダニプロテアーゼインヒビター(TPI)に焦点をあて、マダニ吸血行動と自然免疫に欠かせないヘモサイト由来のクニッツタイプキモトリプシンインヒビター(HlChI)の機能解明を行った。1.HlChIは6つのシステイン残基と3つのS-S結合が保存され、推定分子量は9.1kDaであった。2.HlChImRNAは全発育ステージで確認され、吸血によってその発現量は上方調節されていた。3.内在性HlChIの発現は、主にヘモサイトで確認された。4.HlChIは、牛膵臓キモトリプシンの加水分解作用を阻害することが確認されたが、牛膵臓トリプシンに対する阻害作用は弱く、豚エラスターゼ活性には影響が認めらなかったことから、キモトリプシンに対して特異反応を示すと考えられた。5.HlChIの活性はpH2-11、温度70℃までにおいて発揮された。6.HlChIは8M尿素及びpH8.0の2%SDS存在下で温度37℃24時間において安定であったが、2-メルカプトエタノールでは活性が完全に消失した。7.RNA干渉法で作製したHlChIノックダウンマダニでは、飽血不全と体重減少が惹起され、死滅するマダニが確認され、同時に著しい産卵数の低下が確認された。8.以上の成績より、HlChIは、高安定性のキモトリプシン特異的インヒビターであり、マダニ吸血・消化と繁殖過程の制御に重要な役割を果たしていると考えられた。
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Research Products
(3 results)