2010 Fiscal Year Annual Research Report
マダニプロテアーゼインヒビターの機能解明と応用に関する研究
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09F09519
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
辻 尚利 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所人獣感染症研究チーム, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ALIM MD Abdul 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所人獣感染症研究チーム, 外国人特別研究員
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Keywords | マダニ / 節足動物媒介感染症 / 吸血 / 蛋白分解酵素 / プロテアーゼインヒビター |
Research Abstract |
本研究では、吸血によってマダニ中腸に取り込まれた宿主血液の消化及びバベシア原虫の伝搬に関与するマダニ蛋白分解酵素の機能解明を推進し、現行の防除法に代わる有効で安全性と持続性の高いマダニ防除及び動物・ヒトバベシア症制圧技術を確立する。そのために、蛋白分解酵素の機能を制御するマダニプロテアーゼインヒビター(TPI)に焦点をあて、血液貯留庫の形成・維持に欠かせない血管新生抑制分子のヘマンギンなどの内在性機能について、分子細胞・生化学的性状解析を実施した。1.フタトゲチマダニ唾液腺より分離されたTPIであり、宿主血管新生の阻害活性が確認されたヘマンギンの、吸血時における機能について検討するため、RNA干渉法によりヘマンギンノックダウンマダニを作製し、ウサギより吸血させたところ、対照区マダニと比較して著しい吸血の阻害が確認された。さらに、ノックダウンマダニにおいては、宿主皮下に形成される血液貯留庫の形成不全がみられた。これらの成績より、TPIは血管新生阻害などの機能により、マダニ吸血行動の維持を支えていると考えられた。2.マダニ中腸より分離されたレグマイン遺伝子(アスパラギニルエンドペプチダーゼ)について、マダニ生活環の各発育ステージにおける発現動態と局在を検討した。レグマインの遺伝子発現は、成ダニのみならず、幼ダニ、若ダニにおいても、吸血時にその発現が顕著に増強され、吸血開始後48時間において最も発現レベルが上昇していることが確認された。また、レグマイン遺伝子の発現は、幼ダニ、若ダニ個体においても中腸特異的であることが示された。さらに、マダニ中腸上皮細胞を単離して免疫蛍光染色を行った結果、レグマインの免疫陽性反応は中腸上皮細胞内の食飽にて確認された。これらの結果より、レグマインはマダニの生活環を通じて中腸特異的に発現し、中腸上皮細胞内での血液消化に関与するエンドペプチダーゼであると考えられた。
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Research Products
(3 results)