2009 Fiscal Year Annual Research Report
祭祀演劇中の儀礼文化に関する日中比較研究:宗教学に基づく文学研究
Project/Area Number |
09F09601
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
田仲 一成 The Toyo Bunko, 研究部, 研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WU Zhen 財団法人東洋文庫, 研究部, 外国人特別研究員
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Keywords | 修正会 / 修二会 / 鬼 / 溌寒 / お水取り / 法呪師 / 蘭陵王 / 田楽 |
Research Abstract |
本研究は、中国の巫系演劇(儺戯・目連戯)と日本の地方芸能とを比較し、その異同を分析することにより、中国で失われた祭祀演劇のルーツを探求することを目的とする。本年度(平成21年11月~平成22年3月)においては、奈良県春日若宮御祭りの渡御、お旅所における、田楽、散楽(猿楽)舞楽(蘭陵王など)、岩手県毛越寺の僧侶による延年舞、大分県国東半島の成仏寺、天念寺修正会における法呪師による鬼会、奈良東大寺二月堂の修二会(お水取り)の法呪師の「走り」など、5箇所の中国渡来の古代芸能を集中的に調査した。これにより、中国から渡来した寺社系芸能の基幹を成す「修正会」「修二会」の芸能の実態をほぼ、把握することができた。これら、中国から仏僧によって日本にもたらされた芸能が、日本の寺院または神社(両者は習合している)に保存され、いまなお上演されている実態を写真、ビデオなどにより記録し、今後の比較研究の基礎資料を構築することができた。特に、これら大陸渡来の芸能が、仏教儀礼の中で自己完結することなく、寺院を支える村落の年中行事、歳時風俗と結合して、独特の民俗芸能を形成していることに大きな特徴を見出した。修正会も修二会も冬正月-二月の厳冬期に行われるが、冬を追い出し春を迎える村の「死と復活の儀礼」、特に村の若者の成年式の儀礼(山に籠り斎戒沐浴して神に仕え、その修練を通して成人の資格を認められる:中国の溌寒に似る)と不可分に結合して演ぜられている。中国でも、道士による儀礼と村の祭祀とは結合しているが、日本のような原始的な姿、とくに僧侶自ら演じる芸能は見ることが稀になった。この意味で、この儀礼形態を把握しえたことは、中国の道教儀礼に通じる呉真博士にとっても、日中両国の祭祀演劇に通じる田仲研究員にとっても、大きな研究成果である。今後、できるだけ日本の地方芸能の調査を蓄積し、研究を深めていきたい。
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Research Products
(6 results)