Research Abstract |
再生医療のための生体組織構築においては,血管系非配備の場合にはその厚さは酸素の拡散と消費によって決定され,通常の組織では200マイクロメーター程度である.上述のように本課題は生体外での組織構築にとって極めて重要な問題に関連するが,未だに生体外で機能的な毛細血管網の構築に成功した例はないといってよい.従って,時間の許す限り様々なアプローチ.を極力同じ細胞群を使用して試すという戦術を取った.具体的には,(1)マイクロ流体デバイス技術を使用するアプローチ,(2)マイクロゲルモールディングに基づくアプローチ,(3)モジュラーアッセンブリィーに基づくアプローチ,の3つである.また,血管構成細胞として,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC),マウス周皮細胞へ分化する10T1/2細胞,マウス線維芽細胞NIH 3T3細胞を,また臓器由来細胞としてヒト肝ガンHep G2細胞を使用した. (1)については,コラーゲンやフィブリンゲル内部にチューブ状の灌流路を形成し,その内表面に血管内皮細胞を均一に播種・単層を形成することには成功した,しかしながら,培養液の灌流・VEGF-AやFGF-2といった血管新生を促進する増殖因子の添加等,基本的な外部条件を一通り試したが,チューブからゲル内部への顕著な血管新生を実現することはできなかった. (2)については,1日の培養にて中間のマイクロ流路内にゲル固定化された血管内皮細胞は,流路に沿ってチューブ状べと自己組織化した.血管内皮細胞に全面的に頼るのではなく,ある程度の人工的マイクロ構造を付与することの重要性が確認できた.形成された血管内皮チューブの内部には断続的な空間が多数形成されたが,その内部に培養液を連続灌流することは不可能であり,数日後には崩れてしまった,そこで,周皮細胞を血管内皮と共にゲル固定化したところ,二者が階層的に配置したチューブ状構造が形成され,それは10日間以上維持された.しかしながら,内部の貫通性についての顕著な改善は見られなかった. (3)については,臓器細胞エレメント(肝ガン由来細胞と線維芽細胞からなる)を,微小な生分解性不織布粉砕物と共に微小空間に充填固定化することで,広い間隙を物理的に確保するというアイデアの有効性を確かめた.その結果,不織布粉砕物を入れない系では早晩に機能低下が見られたが,不織布粉砕物を共に固定化した場合は,1週間以上にわたって安定した灌流培養が可能であり,肝臓の機能が高いレベルで維持された.
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