2011 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴシン1リン酸のシグナル伝達を用いたアルツハイマー病の病態解析
Project/Area Number |
09F09733
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 俊一 神戸大学, 医学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JESKO Henryk 神戸大学, 医学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / αシヌクレイン / スフィンゴシン1リン酸 / スフィンゴシンキナーゼ |
Research Abstract |
スフィンゴシン1燐酸(SIP)は酵母からヒトに至る真核生物に広く存在し、血管内皮細胞や繊維芽細胞等の増殖促進作用やアポトーシス抑制能など多彩な機能を有する脂質メディエーターである。中枢神経系ではSIPやその産生酵素スフィンゴシン・キナーゼ(SK)が豊富に存在するが、神経に特異的な機能に関しては不明であった。最近我々は微量のSIPが海馬神経細胞から神経伝達物質の放出を引き起こすことを報告した。これらの事実は、SIPが生理的に記憶や学習の過程で重要な役割を演じている可能性を示唆している。 そこで我々はこれらの認知症関連蛋白質とSIPシグナル伝達系の接点を探ることにより、認知症の病態解析を分子レベルで行いたいと考えている。これまでに我々は、これらの認知症関連蛋白質の遺伝子の分子クローニングに成功している。今後これらのタンパク質をSH-SY5Y細胞に恒常的に発現する細胞株を樹立し、SIPシグナル伝達系を介する神経伝達物質の放出に及ぼす影響について解析を行ってきた。αシヌクレインを発現する細胞にSIP産生酵素である.スフィンゴシンキナーゼ(SK)の阻害薬DMSを作用させたところ、αシヌクレインの細胞外への放出が促進された♂しかしながら、別のSK阻害薬HACPTを細胞に作用させたところ、αシヌクレインの細胞外への放出はかえって抑制された。これらの相反する結果の解釈として、用いたSK阻害薬のSKに対する特異性を調べる必要性があった。特にDMSは高濃度で細胞に用いると、プロテインキナーゼCを抑制するとの報告も有り、注意が必要である。更に、SKには2つのアイソザイムSK1とSK2があり、DMSはSK1を特異的に抑制することをin vitroの系を用いて明らかにした。今後SK2とαシヌグレインの細胞外への放出との関連に焦点を合わせて更に解析を進めてゆきたい。
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Research Products
(2 results)