2009 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴシン1リン酸のシグナル伝達を用いたアルツハイマー病の病態解析
Project/Area Number |
09F09733
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 俊一 Kobe University, 医学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JESKO Henryk 神戸大学, 医学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / αシヌクレイン / スフィンゴシン1リン酸 / スフィンゴシンキナ |
Research Abstract |
アミロイドβタンパク質の放出並びに蓄積がアルツハイマー病の発症と密接な関係があることは良く知られている。一方、αシヌクレインはパーキンソン病の原因タンパク質とも考えられ注目を集めるが、その機能は不明である。更に、アルツハイマー病と共に頻度の高い認知症であるレビー小体認知症に関しては、レビー小体の主要成分がαシヌクレインであることが明らかにされ、このタンパク質の生理作用並びにこれにより引き起こされる神経変性疾患の病態に益々関心が集まっている。 ジェスコ氏は11月に来日以来、アルツハイマー病やパーキンソン病等の神経変性疾患と関連の深いαシヌクレインやアミロイドβペプチドの神経細胞からの放出と神経変性との関連や神経機能への直接的な関与を調べる為に、先ず始めにこれらのタンパク質をコードする遺伝子のcDNAクローニングを行った。ヒトの脳のcDNAライブラリーを用いてPCR法によりこれらのタンパク質の全長をコードするcDNAを取得し、これらを発現ベクターに組み入れた。次にヒトの神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞に遺伝子導入し、抗生物質を用いたセレクションを行い、これらのタンパク質を恒常的に発現する安定株を作成することに成功した。 今までこれらのタンパク質の神経細胞からの放出機構に関しては不明であった。しかしながら受け入れ教員の所属する研究室では、スフィンゴシン1リン酸(S1P)が海馬神経細胞から神経伝達物質の放出を引き起こすことを最近見いだした。そこで神経細胞からのαシヌクレインやアミロイドβペプチドの放出にS1Pが関与しているかを調べる目的で、S1Pの産生酵素であるスフィンゴシンキナーゼ(SK)の阻害薬DMSを用いてSH-SY5Y細胞を処理したところ、これらのタンパク質の放出が顕著に抑制されることが明らかとなった。
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