Research Abstract |
本研究は液滴エピタキシー法で作製するGaAs量子ドットなどの半導体ナノ構造について,(1)ナノ構造の形状の異方性による電子準位の分裂と偏光特性の詳細な評価,(2)ファブリペロー共振器を用いたスペクトル幅の精密測定による位相緩和過程の解析,(3)ファブリペロー共振器と光子相関測定の併用による励起子準位のスペクトル拡散の直接測定,および,(4)フォトニック結晶マイクロ共振器を利用した単一ドット共鳴SHG(第2高調波発生)の実現,を目的とする。 平成22年度には,液滴エピタキシー法で作製したGaAs量子ドットを対象に,偏光による励起子準位の分裂(微細構造分裂)を詳細に評価した。これまでの(1,0,0)面に代えて,AlGaAs(1,1,1)A基板面上に形成したGaAs量子ドットは面内の対称性が特に高く,ドットサイズに依らず,20μeVという極めて小さな微細構造分裂を示すことが判明した。スペクトル幅については,昨年自作したファブリペロー干渉計による高分解能測定で4μeVの値が得られた。この値は,自己成長量子ドットの中でも最高値と言うことができ,結晶品質の高さを裏付けるものである。励起子準位のスペクトル拡散については,ファブリペロー干渉計と光子相関計測装置を組み合わせた測定から,特性時間が数百ナノ秒と見積もられた。さらに,励起子分子とトリオンの結合エネルギーのドットサイズ依存性を詳細に測定し,量子モンテカルロ法による理論値とよく整合する結果を得た。液滴エピタキシー法による格子整合系量子ドットでは内部歪みによるピエゾ電場が無く,結合エネルギーのドットサイズ依存性などの測定が可能であることから,少数多体系の電子相関の研究に格好の試料であることが今回の測定から明らかになった。
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