2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09F09769
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山内 泰 National Institute for Materials Science, 量子ビームセンター, グループリーダー
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PRATT Andrew 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームセンター, 外国人特別研究員
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Keywords | マグネタイト / スピン偏極 / 準安定脱励起分光法 / 反応性蒸着 / 原子状水素 / ハーフメタル / 界面 / 表面 |
Research Abstract |
スピン工学で注目される高い磁気抵抗比を実現するには、Fermi準位の電子状態密度が100%偏極した、いわゆるハーフメタルが最も望ましい。しかし、バルクとしてハーフメタルであることが確認されていても、スピン素子の磁性・非磁性体複合構造において界面近傍まで、ハーフメタルであるかは必ずしも明らかではない。最も簡単な界面である清浄表面でさえ結晶構造の不連続性によって電子状態がバルクと大きく異なり、スピン偏極率もバルクの100%に達しない可能性が高い。マグネタイト表面については、スピン偏極光電子分光法を用いてスピン偏極率が40%から80%と見積もられている。しかしながら、光電子分光法ではバルクの寄与があるため、最外層の偏極率はさらに小さい値であることになる。これを検証するには、最外層のみのスピン偏極を計測することが必要である。そこで表面敏感性が極めて高い、熱エネルギーレベルで運動する準安定ヘリウム原子線を用いるスピン偏極準安定脱励起分光法により、これを検証した。具体的には、物質・材料研究機構に既設の装置を改造して酸素ビーム源を追加することにより、反応性蒸着法で超高真空中でMgO基板上にマグネタイトを成長させ、スピン偏極準安定脱励起分光法により、表面最外層のスピン偏極を、試料を真空外に取り出すことなく、その場測定した。その結果、最表面のスピン非対称率がFermi準位近傍で数%程度に低下していることを検証した。さらに、原子状水素を照射して水素化することにより、Fermi準位近傍のスピン非対称率が劇的に回復することを見出した。このスピン偏極の回復現象は、磁性・非磁性界面でのスピン偏極制御技術の出発点になる極めて重要な発見である。
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