2011 Fiscal Year Annual Research Report
複数気候モデルに基づく異なる気候条件下での北半球ストームトラック変動の研究
Project/Area Number |
09F09807
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 尚 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LAINE Alexandre 東京大学, 先端科学技術研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 古気候 / ストームトラック / ジェット気流 / 潜熱解放 / 大気循環モデル / 移動性擾乱 / 大気傾圧性 / バルク法 |
Research Abstract |
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第4次評価報告書に用いられた最新の数値気候モデル実験のデータの解析から,冬季北半球中高緯度における降水量の将来変化に関わる重要な過程が明らかにされた.まず,従来からの指摘の通り,温暖化に伴う飽和水蒸気圧上昇による水輸送の活発化で,水蒸気輸送の収束・発散の地理的差異が一層明瞭化する.それに加え,相対湿度の変化の寄与は全球規模では無視できるものの,亜熱帯の沿岸では無視できないことを見出した.さらに,温暖化に伴う大気循環の変化が水蒸気輸送にかなりの影響をもたらすことが分かった.特に,移動性高低気圧の活動の変化を別個に評価したのは本研究が初めてである.温暖化に伴い亜熱帯高圧帯とその北に位置するストームトラックとともに,水蒸気輸送の発散域・収束域もそれぞれ現在より北偏する傾向が見出された.一方,局所的な降水変化に寄与する地表面からの蒸発変化の要因についても解析した.海面水温・海上気温ともに上昇するため比湿差が増大して,蒸発の増加に寄与する.また,海陸の相対湿度のコントラストが増大する効果や,上記風系の変化も無視できない寄与を蒸発の変化にもたらすことが確認できた. さらに,古気候モデル相互比較プロジェクトに基づく最終氷期の気候状態の再現実験データにも同様な解析を適用した.その結果,大規模大陸氷床の影響で強化される停滞性の惑星規模波動に伴う水蒸気輸送の変化が,その収束・発散域の南偏に大きく寄与する事が分かった.また,付随する北太平洋・北大西洋の各ストームトラックの南偏,南北幅の縮小と東西伸長の影響が,中緯度の南北水蒸気輸送に明瞭に反映されることも見出された.なお,全球的な気温低下の影響は予想通り温暖化とは逆センスであったが,温暖化に伴う変化に比べ,水循環に対する気温変化自体の影響はさほど大きくないことが理論予想通りに確認された.
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Research Products
(2 results)