2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本の裁判員制度の導入を社会全体の制度の受入れ及び政策決定過程から分析する。
Project/Area Number |
09F09818
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 淳子 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CROYDON Silvia 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 裁判員制度 / 司法制度改革審議会 / 日本弁護士連合会 / 冤罪事件 / 刑事事件のスピード化 / 政治的妥協 / 日本国民性・文化 / 市民の刑事司法参加 |
Research Abstract |
アメリカ占領期の日本の官僚界が戦前実施されていた陪審制度復活という米側のアイデアに反対した背景があるなかで、なぜ21世紀初めの政府が裁判員制度のような、一般市民の司法制度に関与をすることが認められる制度を、外圧もなく、そして裁判員制度反対市民運動にも逆らって、導入するイニシアティブをとったのかが今回の研究の疑問であった。そこで今回の国会と司法制度改革審議会の議事録及びインタービューに基ついた調査で今まで分かったことは、裁判員制度を導入する結果となったのは小泉内閣が司法制度を含む構造改革路線を打ち出したなかで、日本弁護士連合会の刑事裁判に市民の声を聞くという要求は、刑事事件処理のスピード化に繋がるからか冤罪事件を防ぐからはともかく、司法制度改革審議会委員の間に共感を得たからである。しかし、裁判所に向けられていた批判が不公平だと感じていた多くの裁判官は現状維持を訴え、検察庁も陪審制度に反対だったので、職業刑事裁判官と素人裁判員から構成される「裁判員制度」の政治的妥協に至った。裁判員制度が始まって以来の政府調査によると、裁判員を務めた人の90%以上は「裁判員をやって良かった。良い経験だった」と答えている。更に、職業裁判官の多くも素人による刑事裁判参加についての意見を変え、裁判員制度を評価しているようである。これらの結果は、刑事司法への市民参加は日本にも根付くだろうという徴としてとられることができる。この発見は、「市民参加要素の刑事司法制度というのは日本国民性、あるいは日本文化、に合わない」という占領期の日本官僚界の議論は間違っていることを裏付ける。戦前、日本で、陪審員として務めることが許されたのは30歳以上の男性のみだった以上は、「国民性・文化」の議論は必ずしも成り立たない可能性はあった。なぜなら、このような陪審制度が機能しなかったのは、参加する資格を持っていた人達はみな戦場に行っていたからかもしれない。しかし、現在の裁判員制度が日本に深く根ざしたことを証明すれば、日本の国民性・文化が市民による刑事裁判と共存できるかについての議論の余地がなくなります。
|
Research Products
(1 results)