2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本の裁判員制度の導入を社会全体の制度の受入れ及び政策決定過程から分析する。
Project/Area Number |
09F09818
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 淳子 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CROYDON Silvia 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 裁判員制度 / 司法制度改革審議会 / 日本弁護士連合会 / 冤罪事件 / 刑事事件のスピード化 / 政治的妥協 / 日本国民性・文化 / 市民の刑事司法参加 |
Research Abstract |
日本は一昨年、裁判員制度と共に、犯罪被害者・遺族意見陳述を法廷で利用する「被害者参加制度」という制度を導入した。しかし、被害者・遺族の刑事訴訟への直接の関わりを認めてよいのか、認めてよいのであれば、どの段階でどの程度の関わりを認めてよいのか、という問題を巡って依然として争論が続いている。一方では、被害者運動活動家が,犯罪というのは国家ではなく、個人に対して起きるもので、そうである以上は、刑が決められるに当たって、被害者・遺族にも意見を聞いてもらう権利が当然あり、量刑判断責任者には判決を、被害者・遺族の望むそれに照らし合わせて、説明する義務がある、と主張する。他方では、弁護士の多くが、被害者参加人陳述は、まだ裁かれてもいない被告人のことを犯人であるという前提でなされるものとして偏見的であるだけではなく、裁判で注目すべき刻象を被告から被害者へと移し、犯罪の根本的事実よりも被害者の身分や雄弁術によっての判決の可能性を生み出すことで、盲目的正義観念を無効にする、と訴える。私は、この問題について自分の価値観を薦めるより、実証的アプローチをとり、被害者参加人陳述が達成するとされるその目的を基準にし、達成成功度を測定することを試みている。被害者参加制度がとっくに設置されている今や、抽象的議論の領域から脱却し、被害者参加人陳述のパーフォーマンスを実際に測ることで,論争解決への新しい道が見えてくるのではないかと思う。 検討の対象は、被害者参加人陳述が豊富に採用された上記の殺人事件とする。そこで述べられた被害者参加人陳述の効率を、歴史において考慮された刑罰を与えることの目的の中のもっとも影響力があったとされる3つの「修復的司法」、「応報的正義」と「更生司法」の促進効果という基準に照らして評価する。 裁判員裁判の対象とされる事件の大多数が人に対して暴行・脅迫的行為を行った事件である限り、このような法廷においては裁判結果に個人的に利害を持つ被害者・遺族による陳述がごく普通なことになるであろう。そういう仲で、被害者参加精度のあり方やその有無を実証的評価の基で改めて検討する必要があるのではないかと考える。これをするこのによって、犯罪被害者と被告人の人権との間に起きる対立をいかに解決すべきか、という悩ましい問題の統一見解がより早く成立することに貢献するであろうと考える。
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Research Products
(4 results)