2009 Fiscal Year Annual Research Report
モリブデンおよびタングステンを用いた安定同位体海洋地球化学
Project/Area Number |
09J00009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 裕介 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | モリブデン / タングステン / 同位体 / 地球化学 / 海洋化学 |
Research Abstract |
従来開発した海水中Mo精密同位体分析法を,様々な海域,深度で採取されたサンプルに適用した.海域,深度,水塊構造によらず海洋内のMo同位体組成が均一であることを証明した.分析法を陸水にも応用した,雨水から河川源流域にかけてMo濃度,同位体組成が変動することが分かった.琵琶湖の湖水では温度躍層の生成による表層と中層の間のMo同位体の分別が確認された.淀川水系の河川を測定した結果は従来の河川中Mo同位体組成の報告と同一の傾向を示し,その妥当性を示した.また硫化水素が発生するような還元的な湖(Lake Cadagno, Swizerland)での分析結果から,酸化的な陸水と還元的な陸水とではMoの同位体分別の仕組みがまったく異なることが明らかとなった.これは理論計算により示唆されていたが,実試料の測定でも同様であることが分かった.これらの成果は,現在のMo同位体海洋地球化学において研究が及んでいない部分,あるいはまだデータが少なく信頼性の低い部分を補うものであり,より詳細な,現在ならびに過去の地球表層のMo移動,同位体収支の見積もりや,過去の地球表層,特に海洋の酸化還元状態の復元に貢献した.また,海水中W精密同位体分析法を開発し,海水中W同位体組成を初めて明らかにした.W同位体海洋地球化学はまだ研究が始まったばかりであり,これからデータを蓄積する必要がある.主要なリザーバーであり,同位体比測定が困難な海水のデータを提供したことにより,W同位体海洋地球化学を大きく進化させることができた.
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Research Products
(2 results)