2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の言語運用における社会階層間の差異についての研究
Project/Area Number |
09J00018
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前馬 優策 Osaka University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 言語 / 統制 / 階層 / 学校 / 格差 |
Research Abstract |
言語力の格差の問題、そして、それにともなう学力格差の問題を考えるうえで、子どもたちがどのような言語運用能力を身につけて入学してくるかは重要な問いである。この点を曖昧にしたままで、「言語力」を育成しようとすると、現在確認されているような学力格差のみならず、新たな問題が生じかねない。本研究では、社会階層間にみられる言語運用上の差異の性質・程度について明らかにすることを第一の目的とする。そして、そういった差異が、学校生活や授業を通して、どのように学習を媒介しているのかを明らかにすることを第二の目的とする。これらによって、社会階層間にみられる言語運用の特性を明らかにし、それらが学校生活で現れる様々な有利・不利を生み出す様子を描き出すことができる。 今年度は、異なるバックグラウンドを有する小学校2校においてフィールドワークを行った。1校は高級住宅街を校区に含み、階層的背景の高い子どもが多い学校。もう1校は公営団地に囲まれた学校で、就学援助率・ひとり親家庭率などが相対的に高い学校である。学力的に見ると、前者の方が後者に比べて大幅に高い。フィールドワークは平成21年5月から平成22年3月まで実施した。それぞれの学校に週1回ずつ通い、主に2年生の授業観察を行った。授業場面で見られる教師・児童の発話・会話を記録し、異なるバックグラウンドをもつ学校において、授業場面での発話・会話はどのような形態をなしているのかを明らかにしようと試みた。授業場面を観察した結果、高階層的バックグラウンドの教室では、教師が個人の内面に働きかける言語統制を試み、それに子どもが応えるというやりとりが頻繁に見られた。これは、バーンスティンの言う「個性志向」に対応するものである。一方の低階層的バックグラウンドの教室では、外部からの統制が頻繁に行われていた。バーンスティンの言う「地位志向」的な統制の仕方である。
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