2009 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性細線における単一磁壁の動的ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
09J00040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 浩太 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピントロニクス / 磁壁移動 / トンネル磁気抵抗効果 / 2次元数値シミュレーション |
Research Abstract |
本年度は、高磁場領域における単一磁壁の移動メカニズムの解明を行った。数100eまでの低磁場領域における磁壁移動は1974年に提唱されたWalkerの1次元モデルによって説明することができる。しかし、数100 Oe程度の高磁場領域ではそのモデルから大きく外れ、非常に高速な磁壁移動が観測されている。この高速移動メカニズムは、現在まで十分に理解されておらず、基礎物理として非常に重要な課題である。さらに、近年、磁壁はメモリ素子への応用が期待されており、磁壁の移動スピードは素子の動作スピードに直結するため、その移動メカニズムの解明が求められている。 本研究では、トンネル磁気抵抗効果を用いた磁化の高感度測定を行った。実験では強磁性細線(CoFeB)の幅を352-849nmまで系統的に変化させたときの磁壁速度の測定を行った。この測定の結果、磁壁速度は線幅が広いほど速く動くという磁壁速度の細線幅依存性を初めて明らかにした。この結果は磁壁速度を物理定数のみで記述したWalkerのモデルでは説明できない結果である。 そこで、この実験結果を2次元数値シミュレーションと比較することで、高速移動している磁壁の移動メカニズムを解明することを試みた。数値シミュレーションによると高磁場領域では、単一磁壁の内部に新たな磁区構造を形成することでより速い磁壁移動を可能にしていることがわかった。この効果は細線幅を広くすることでより促進され、磁壁内部に新たな磁区構造の形成を早めていることがわかった。またこれらのシミュレーションから求めた磁壁速度と実験値は非常によい一致を示した。 以上の結果は、磁壁移動という非常に基礎的な物理現象の解明を行ったことになる。現在、これらの結果を論文にまとめ、投稿中である。
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Research Products
(5 results)