2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦後政治におけるジェンダー・ポリティクス-アジア女性基金をめぐって
Project/Area Number |
09J00062
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
土野 瑞穂 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | ジェンダー / 戦後補償 / 戦後日本政治 / 女性国会議員 |
Research Abstract |
2009年度は、交付申請書の記載どおりインタビュー調査に重点を置いた。そこで、「慰安婦」問題に関わったアクターとして本研究が着目する女性国会議員たちの中で「女性のためのアジア平和国民基金」(以下、アジア女性基金)の設立に関わり、「慰安婦」問題に関する国会でのキーパーソンだった女性元国会議員A氏へのインタビューを行った。A氏へのインタビューからは、理想的な解決の在り方をアクター間で共有していたとしてもその実現方法は、アクターの立場性や状況認識によって異なること、そのことが日本をはじめとする支援団体との間に齟齬を生じさせた要因であることがわかった。支援団体側は、アジア女性基金が同基金の事業の受け取りをめぐって支援団体や当事者の間に分裂が政府によってもたらされたと主張している。しかしその主張には、政府に対する一枚岩的な認識、さらに右派に対する認識の弱さが指摘できる。「分裂」ということについて言えば、抵抗勢力にどう立ち向かうのかという方法論をめぐり、共闘できたはずのA氏、支援団体などの左派内に分裂をもたらしたこと、故に右派勢力の拡大を許し、当事者の望む国家補償の実現を阻害してしまっている現状に筆者は「分裂」の意味の重大さを感じている。 そこで本研究において、どのようなアクターが何を可能にさせ、どこに共闘できる可能性があったのか、アジア女性基金はどのような可能性をもつものとしてA氏は関わったのか、アジア女性基金をめぐる各アクターとその行動を1990年代の時代状況に位置付けて鳥瞰図的に明らかにし、今後の展開の可能性を模索することは、政権交代が起こり再び問題解決にとっての政治的機会が訪れた今日、急を要する課題であると認識している。その意味で、本研究は、問題解決に向けた政策を「どう」実現するのか、市民にとっての実践的な研究となるだけでなく、戦後日本政治のいびっさやジェンダー視点の欠如をあぶり出すことにつながると考えている。
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Research Products
(5 results)