2010 Fiscal Year Annual Research Report
グラム陰性菌由来リポ多糖に対する植物自然免疫の解明
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09J00086
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
武藤 さやか 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リポ多糖 / lipopolysaccharide / シロイヌナズナ / LPS-binding protein / bactericidal/permeability-increasing protein |
Research Abstract |
シロイヌナズナの持つ2つのAtLBP(A.thaliana LPS-binding protein)について、生化学的・生物学的機能解析を行った。AtLBPのN末端領域を含んだ組換えAtLBP-Nと、大腸菌由来の精製LPSをインキュベートするLPS-binding assayを行った。その結果、両者が直接結合する事が明らかになった。この結合は、大過剰のペプチドグリカンやフラジェリンの添加により阻害されなかった。AtLBPはN末端にLPS特異的な結合領域を持つと考えられる。更に、困難を極めた全長AtLBP2のクローニングに成功し、組換えAtLBP2-FLを得ることが出来た。組換えAtLBP2-FLはLPS結合活性を保持していた。今後は、AtLBP2のC末端領域を含めた機能解析が可能になった。 AtLBP2変異株にLPS処理をすると、処理48h後に見られる病害抵抗性遺伝子の発現が早まる。そこで、LSP処理に伴う葉からのH_2O_2放出量を調べた。その結果、WTと.AtLBP変異株間で有意差は見られなかった。H_2O_2放出はエリシター処理後わずか数分以内に観察される急性応答のひとつである。AtLBP2はLPSに対する即時的な応答には関与せず、数時間~数日後に現れる後期応答にのみ関わると考えられる。また、病原菌Pseudomonas syringe pv. tomato DC3000を使った感染実験を行ったが、WTとAtLBP変異株における感染菌数に有意差は見られなかった。DC3000はエフェクターを植物に注入し自然免疫を抑制する。エフェクターを保持しない非病原菌感染時の感染菌数おいて、WTとAtLBP変異株間で差が見られた。このことから、AtLBPがエフェクターの作用を受けている可能性が考えられる。更に、シロイヌナズナの根と葉におけるAtLBPの発現パターンを調べた。その結果、AtLBP1発現は根と葉のどちらにおいても確認されたが、AtLBP2発現は葉に多く、根に少ないことが分かった。更に、シロイヌナズナ全体にLPS処理をすると、根と葉に見られたAtLBP1発現が減少した。これらの結果は、器官特異的なAtLBP機能の違いを示唆する。今後、器官ごとのH_2O_2放出量や細菌感染数を解析すれば、より詳細なAtLBPの機能解明が期待できる。
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Research Products
(3 results)