2009 Fiscal Year Annual Research Report
3次元多重格子輻射磁気流体力学シミュレーションを用いた星形成現象の系統的研究
Project/Area Number |
09J00159
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
富田 賢吾 The Graduate University for Advanced Studies, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 星形成 / 数値計算 / 輻射輸送 / 磁気流体 / ALMA / 観測的可視化 |
Research Abstract |
輻射輸送は星形成過程におけるガスの熱力学を支配する重要な素過程の一つである。例えば重力によって収縮したガスがある段階で光学的に厚くなり、ガスが断熱的になることで一時的に安定なファーストコアと呼ばれる天体を形成することが知られている。このため、輻射と流体力学を同時に取り扱う輻射(磁気)流体シミュレーションは星形成過程め研究には極めて重要な手法となる。輻射輸送計算は計算コストが高いため、これまでの多次元計算では一次元の輻射流体計算の結果から近似的にガスの熱的性質を求めるバロトロピツク近似が用いられてきた。本研究では計画通り流束制限拡散近似に基づく3次元多重格子輻射磁気流体シミュレーションコードを開発し、現実的な熱力学を取り入れた計算が可能になった。現状このような問題を扱うことのできる輻射磁気流体シミュレーションコードは世界でも数例しかないため、競争力の高い数値計算コードができたと自負している。このコードを用い、現実的な状況設定の下低質量星形成過程の数値計算を行った。その結果これまでのバロトロピック近似は現実的なガスの熱的進化を十分に再現できず、全体的にガス温度を過小評価する傾向があること、それにより形成されるファーストコアの力学的な構造や大きさに定量的な変化が生じることを見出した。このような天体の観測的性質は温度に敏感に依存するため、輻射流体計算により現実的な熱的性質を求めることは観測の予言及び解釈に置いて本質的に重要である。またガスの熱力学は回転する円盤の分裂、角運動量輸送効率、連星形成などに影響するため、星形成過程そのものの定量的理解にも重要である。次世代の大型観測計画であるALMAでは星形成領域の観測が劇的に進展すると期待されるため、それに向けてより精密なシミュレーションや観測的性質の予測に取り組んでいる。
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