2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00163
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中村 隼明 Shinshu University, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 始原生殖細胞 / 生殖系列キメラ / 凍結保存 / ブスルファン / 乳化液 / ニワトリ |
Research Abstract |
1.始原生殖細胞採取胚の活用による鳥類遺伝資源の効率的な保存 国の天然記念物に指定されている岐阜地鶏を保存対象にした。鳥類の始原生殖細胞は胚体外領域から生殖巣へ移動する際、一時的に血流中を循環するという性質がある。この時期に採血し、血中から始原生殖細胞を単離後、液体窒素中にて凍結保存した。採血した胚を温存したところ、継続的に発生し、生体として保存可能であった。また、これらの個体は通常の岐阜地鶏と同等の繁殖能を有していた。以上より、動物において初めて始原生殖細胞とその収集時に温存した胚を生体として同時に保存することに成功した。 2.同種間生殖系列キメラを利用した希少家禽の再生 本研究ではドナー始原生殖細胞を移植する時期に内因する始原生殖細胞の数が大きく異なる白色レグホーン種多数系あるいは少数系を宿主に用いた。生殖系列キメラは上記の研究で生体として保存した岐阜地鶏と交配した。その結果、多数系では3.1%の効率で、また少数系では23.3%の効率で岐阜地鶏が産出された。少数系同士を交配した場合のみ、6%の効率で岐阜地鶏を再生することに初めて成功した。以上より、ドナー始原生殖細胞の移植時期に内因する始原生殖細胞数が少ない系統を宿主に用いることで生殖系列キメラを介して効率的にドナー由来の個体を再生することが可能である。 3.同種間生殖系列キメラを介したドナー生殖細胞由来の配偶子産出効率の向上 宿主胚の内因性始原生殖細胞の除去にはブスルファンを用いた。ブスルファンが溶解した乳化液を宿主胚の卵黄中へ注入した。この乳化液は卵黄より比重が軽いため、注入後直ちに浮上し、胚を覆った。1胚あたり100μgのブスルファンを投与することで内因性始原生殖細胞が無処置区の99.4%除去された。この胚へドナー始原生殖細胞を移植したところ、生殖巣へ移住し、増殖することが確認された。また、検定交雑の結果、生殖系列キメラは99.5%の効率でドナー由来の後代を産出した。また、作出した生殖系列キメラの66.3%はドナー由来の後代のみを産出したことから、ドナー由来の配偶子のみを生産していることが示唆された。これ生殖系列置換キメラ同士を交配した結果、ドナー由来の後代のみが産出された。以上より、鳥類において初めてドナー由来の配偶子のみを生産するキメラニワトリ作出技術を開発した。
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Research Products
(8 results)