2009 Fiscal Year Annual Research Report
京都新技術3.8m望遠鏡開発とBe/X線連星系の観測的研究
Project/Area Number |
09J00212
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森谷 友由希 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 精密制御 / 精密測定 / 補償光学 / X線連星 / 連星相互作用 / 分光観測 |
Research Abstract |
1)京都新技術3.8m望遠鏡開発については、主鏡セグメントの位置制御機構の実験及び可視光透過型補償光学装置の開発を中心に行った。主鏡セグメントの位置制御機構に関する実験は、まず非接触式位置センサの安定性の評価を行い、環境補正により1~2週間程度50nm以下の安定性を保って位置を測定できることを確めた。また、アクチュエータの持つバックラッシュ量、及び指令値に対するオフセット量等を求めた。次に、主鏡セグメント同士の位相を合わせる5色レーザーを用いた「位相測定カメラシステム」が原理的に動作することを確かめた。現在は、主鏡セグメントのレプリカ及び主鏡支持機構・架台部分の一部を複製したものを用いて、実際に使用される状況と近い状況で実験を行っている。透過型補償光学(A0)の可能性については、すばる望遠鏡A0チームの0liver氏が開発したA0シミュレータに京都新技術3.8m望遠鏡用にシミュレータの条件を適用し、その効果を検討した。その結果、広帯域フィルターの場合、狭帯域フィルターの場合ともにA0が有効であることが分かった。 2)Be/X線連星系の観測的研究について:今年度はこれまでの観測から示唆されたA0535+26における2Be星ガス円盤の『高温あるいはwarpしている部分』の検証を行った。まず、2008年3月迄に観測してきたデータを用いて、Hα線及びHβ線(共に水素原子の再結合線)輪郭の持つ2つの山の非対称性が、約500日の周期で変動していることが分かった。更に、Doppler tomographyという手法を用いてこの500日の周期でBe星ガス円盤の中を回転している非対称な構造を再現することに成功した。検証の結果、『高温あるいはwarpしている部分』はこの周期的な輪郭の変動によるものであることが分かった。続いて、「X線アウトバースト前後における『Be周ガス円盤と中性子星との潮汐相互作用による変動』の観測」を目的とした分光観測を、2009年12月に行ったが、幸運にも観測を行っているときにA0535+262が2005年以来のX線巨大アウトバーストを起こした。このアウトバーストは近星点通過時に起きるX線アウトバーストとよりも規模が大きく、頻度も低い。巨大アウトバースト時のBe星ガス円盤の様子がモニター出来たのは初めてで、中性子星との相互作用を調べる上で大変貴重な観測になった。現在はこの観測について分析・議論を進めている。
|