2009 Fiscal Year Annual Research Report
ジョン・フォード映画研究―20世紀アメリカ文化社会におけるジェンダーの主題論的表象
Project/Area Number |
09J00240
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 徹 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ジョン・フオード / 1950年代 / ジェンダー / ハリウッド映画 / アンソニー・マン |
Research Abstract |
ジョン・フォード映画におけるジェンダー表象の特性を明らかにするために、採用初年度である本年度は、その予備的考察として1フォードに関する映像資料・文献の調査・収集、2フォードの周辺作家の作品についての社会学的テクスト分析、3ハリウッド映画における男性のジェンダー表象についての歴史的分析をおこなった。2については、1950年代のハリウッド映画の立役者の一人であり、フォードとの関連も浅からぬ映画作家アンソーマンの作品に着目し、その男性表象、風景表象と第二次世界大戦後のアメリカ社会状況の共振性を再検討に付した。またその成果を二編の論文として発表した。戦後のアメリカ社会の物質的繁栄と精神的混乱のなかで、ハリウッド映画もまた大きな地殻変動を経験したことは周知のとおりだが、そうした地殻変動が物語や人物造形を超えたさらに広範囲の表象の水準-たとえば風景や事物のありよう-にどのような影響をおよぼしたのかについては未解明の部分が多い。当該論文では個々のテクストの肌理を通じてその一端の解明を試みた。3については、すでに一世紀におよぶハリウッド映画の歴史のなかで、男性のジェンダー表象がどのような生成変化を遂げてきたかを身体論的な視座から考察した。この問題は従来ジャンル別ないしは時代別に検討されることが少なくなかったが、本研究ではこの問題を、ジャンルや時代を超えてハリウッド映画に頻出する特定のシーン-たとえば入浴シーンや決闘シーン-を基軸に据えて横断的に分析することによって、先行研究が看過してきたジェンダーとセクシュアリティにまつわる論点を前景化するように努めた。事実、そこから見えてきたのは、男性身体=見る主体/女性身体=見られる対象といった先行研究が提示してきた単純な二元論には還元しきれない男性身体の複雑なありようである。本成果は次年度中に論文として発表される予定である。
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