2010 Fiscal Year Annual Research Report
対流雲中での太陽光の放射および反射特性に及ぼす乱流の影響の解明とモデル化
Project/Area Number |
09J00241
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 景吾 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 放射熱輸送 / 混相流 / 乱流 |
Research Abstract |
地球温暖化を正確に予測するためには,地球表面の大部分を覆う雲が地球全体の放射熱収支に及ぼす影響を正確に評価することが極めて重要である.しかし,地球温暖化予測の数値シミュレーションに用いられる大気海洋大循環モデル(GCM)では,雲の放射伝達モデルに対して非常に粗雑なモデルが用いられており,雲が放射熱収支に及ぼす影響を正確に評価できているとは言えないのが現状である.特に,対流雲中の雲粒の濃度分布が雲の透過特性や反射特性に影響を及ぼすことはこれまでの研究でも指摘されているが,乱流によって生じる比較的小スケールの雲粒の濃度むらが雲の放射特性に及ぼす影響を詳細に調べた研究は数少ない.そこで本研究では,乱流による雲粒の濃度むらが雲の放射伝達プロセスに及ぼす影響を風洞実験および高精度な数値シミュレーションにより解明し,高精度な雲の放射伝達モデルを構築することを目的とする. 昨年度までに,対流雲中の放射エネルギーの反射・吸収・透過プロセスを模擬する三次元直接数値シミュレーション(DNS)コードの開発を行った.本コードを用いた計算により,乱流中では液滴により散乱する放射エネルギーの割合が減少することが明らかとなった. そこで本年度は,昨年度に開発したコードに並列計算手法を導入することにより,より対流雲に近い大きなスケールの乱流中における放射エネルギーの反射・透過・吸収プロセスの三次元DNSを行った.本DNSにより,大きなスケールの乱流中では液滴により散乱する放射エネルギーの割合の減少が抑制されることが明らかとなった.また,DNSコードを改良することにより,より波長の長い電磁波であるマイクロ波の散乱プロセスを模擬する数値シミュレーションも行った.その結果,乱流中では液滴によるマイクロ波の散乱強度が著しく増加する傾向が見られることが明らかとなった.
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