Research Abstract |
本研究では,骨髄細胞移植の対象患者に対して,より侵襲の少ない移植法を提供し,移植した骨髄細胞をより多く傷害部位へと集積させることにより,機能改善効果を増強することを目的とし,研究を行っている.そしてその解決方策に,骨髄細胞を心筋細胞へと効率的に集積させるツールとして,生体内に存在する糖鎖とレクチンの相互作用に着目し,研究を行った. そこで,これまでのin vitroで得られた,糖鎖工学を用いた骨髄細胞の心筋組織への効率的良い集積に関する研究成果(Kobayashi S, et al.Biomaterials.30:574-582,2009)をさらに臨床応用へつなげるため,モデルマウスを用いたin vivoにおける検討を行った.実験方法はC57BL/6マウスを用い,その左冠動脈を30分間結紮した後,再灌流を行う虚血再灌流による心筋傷害モデルを作製した.それと平行して,同じくC57BL/6マウスから骨髄細胞を採取した後PKH26で蛍光標識を行い,そこへin vitroでの検討で用いたGlcNAc糖鎖を修飾した.そのGlcNAc糖鎖修飾を行った骨髄細胞,または未修飾の骨髄細胞を約3×10^6個末梢から投与し,48時間後に心臓,肝臓,脾臓及び肺を摘出して凍結切片を作製して,蛍光顕微鏡観察にて心筋傷害部位に集積した骨髄細胞数を評価した.その結果,in vivoにおける検討においても,GlcNAc糖鎖修飾を行った骨髄細胞は未修飾の骨髄細胞よりも心筋傷害部位への集積が増加していることが示された.この結果から,生体内においても細胞表面にGlcNAcを修飾した骨髄細胞が,心筋組織にも集積する可能性が推測された.今後はより多くの細胞を心筋傷害部位へと集積させられるかという点が課題となると考えている.
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