2010 Fiscal Year Annual Research Report
人工的な糖鎖修飾法を利用した傷害組織への細胞・薬剤・遺伝子輸送システムの開発
Project/Area Number |
09J00242
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 聡 独立行政法人理化学研究所, 疾患糖鎖研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | 糖鎖生物学 / 炎症 / 糖転移酵素 |
Research Abstract |
昨年度には,心筋傷害モデルマウスである虚血再灌流モデルマウスを作製し,その心臓における傷害部位への骨髄細胞の集積を検討した.その結果,細胞表へ人工的にGlcNAc糖鎖を修飾した髄細胞は,未修飾の骨髄細胞よりも多く心筋傷害部位へと集積していることが示された.しかし,GlcNAcを修飾しても傷害心筋部位へ集積する骨髄細胞はまだ少なく,大部分の骨髄細胞は肝臓や脾臓に集積していた.そこで本年度は,傷害心筋部位に集積する骨髄細胞をいかに増やすことが出来るかを目指し,研究を行った. 申請者は,このin vivoにおける細胞輸送システムを確立するためには,生体内での糖鎖やレクチンの発現調節や機能を理解する必要性があると考え,研究従事機関を理化学研究所・基幹研究所のシステム糖鎖生物学研究グループ・疾患糖鎖研究チーム(受入研究者;谷口直之)に変更した.そして申請者は,再生の機序として炎症が重要な役割を果たすということから,心筋傷害による炎症反応により,心筋細胞側のGlcNAc結合分子や骨髄細胞側の糖鎖の発現が影響を受けている可能性を考えた.そこで申請者は,当研究チームが所有している炎症性疾患に関連した糖転移酵素ノックアウトマウスを用いて、炎症性細胞の解析を行った.具体的には,タンパク質における糖鎖付加の解析をするためにレクチンを用いたレクチンブロッティング及び細胞や組織のレクチン染色を行う.さらに炎症性細胞の機能解析のためにELISA kitを用いた.その結果,コアフコースを付加する糖転移酵素の発現が低下すると,炎症反応が低下する可能性が推測された.これら解析により,炎症性細胞における糖鎖の発現変化が,これらの細胞の機能変化を引き起こす可能性が考えられた.よってのこれまでの2年間の研究成果より,糖鎖-レクチンの相互作用を用いた細胞輸送システムを臨床応用へと近づけることが出来たのではないかと思われる.
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Research Products
(3 results)