Research Abstract |
本研究では,アクチンフィラメントの分子構造ダイナミクスを解析することにより,力学-生化学的因子がアクチン細胞骨格の再構築機能に及ぼす影響を解明することを目的としている.前年度は,基本的なフィラメントの変形を理解する上で重要となるフィラメントの剛性の評価手法について検討した.本年度は,まず,前年度中に得られた研究成果を学術論文としてまとめた.さらに,剛性の評価手法に基づき,張力がフィラメント二重らせん構造・力学特性に及ぼす影響について,分子動力学的アプローチによる検討を行った.以下に,本年度中の主な研究実施内容と,得られた成果をまとめる. 1.アクチンフィラメントの引張,ねじり剛性評価・平衡状態におけるアクチンフィラメント分子構造の熱ゆらぎを観察し,フィラメントの熱ゆらぎに基づいて,エネルギ等分配則から,その引張,ねじり剛性を導出し,実験値との比較検討を行った.その結果,MD法により評価した剛性は,実験値と一致することが示された。 2.張力作用下におけるアクチンフィラメントの構造ゆらぎと力学特性の検討.力学的因子として張力を考慮したアクチンフィラメントの分子挙動に着目し,分子動力学法を用いた挙動解析を行った.張力作用下,および,無負荷状態におけるアクチンフィラメントの分子構造のゆらぎに着目し,先述した剛性評価の手法を用いて,同構造の剛性を評価した.その結果,張力を作用することで,フィラメントの構造ゆらぎは減少し,フィラメントの引張,および,ねじれ剛性・が増大することが明らかとなった. 3.張力がアクチンフィラメントの分子間相互作用に及ぼす影響の検討.アクチンフィラメント構造内部のCoulomb相互作用エネルギに着目し,張力がアクチンフィラメントの分子間相互作用に及ぼす影響について検討した.その結果,張力を作用することで,Gアクチン間のCoulomb相互作用エネルギ・は減少することが示された.
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