2009 Fiscal Year Annual Research Report
実現に向けた量子鍵配送方式の提案、及びその安全性証明
Project/Area Number |
09J00278
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
足立 頼俊 Osaka University, 大学院・基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子鍵配送 / 単一光子源 / 光子統計 |
Research Abstract |
量子鍵配送とは無条件に安全な秘密鍵を遠く離れた送信者と受信者の間で共有する技術であり、最初に提案された量子鍵配送方式はBB84と呼ばれている。BB84方式は現在までに理論的、あるいは実験的な観点から盛んに研究がなされているが、未だ実現には至っていない。実現のためには現実的な装置の使用が不可欠であるが、それらは理想的な装置とは違い様々なエラーを含んでいる。最も大きな問題の1つに、現実的な光源から放出される多光子の存在がある。多光子放出の事象において、盗聴者は「光子分岐盗聴」と呼ばれる攻撃を用いて、当事者に気付かれることなく情報を完全に取得できるため、安全性を保つためには多光子放出の事象を極限に少なくする必要がある。近年の研究で、デコイ状態を利用すればその必要性を緩和できることが分かっているが、デコイ法を一般的な単一光子源に利用する方法は不明だった。 私は送信者側にビームスプリッターを挿入し、反射された一部分の信号を光子検出器で測定することでデコイ法を利用できる方法を提案し、その安全性を解析した。提案した方法では、光源の多光子部分の光子数分布がサブポアッソンの傾向を持つことを把握できれば、理想的な単一光子源と同程度の距離まで鍵配送ができる。よって量子ドットやイオントラップなど、様々な物理系を利用した単一光子源にも適用できる。また、多光子放出確率よりも、その分布の仕方が鍵配送の効率に密接に関係していることを示している。一方で、全ての多光子部分でサブポアッソンの傾向を持つことを把握することは難しいが、数値計算の結果、数個程度までの把握で十分なことが分かった。このことは、現在世界中で開発中の単一光子源でも理想的な光源と同程度の距離を達成できる可能性を示唆している。
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