2009 Fiscal Year Annual Research Report
CD4T細胞を介した免疫バランスと疾患の制御に関する研究
Project/Area Number |
09J00285
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野口 大輔 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | GVHD / CD4ヘルパーT細胞 / サイトカイン / IL-6 / 免役バランス |
Research Abstract |
免疫細胞療法を患者に施すあたり、マイナー抗原に対する免疫応答は無視できぬ事象であり、より効率的な治療法の確立のためにもGVHDは詳細にその機序が解明されなければならない。申請者はCD4ヘルパーT細胞に依存して発症する独自の急性GVHDマウスモデルを用いて網羅的な解析を行った。病理学的な評価、サイトカイン濃度の測定を交え、フローサイトメトリーや抗体染色法などの生理学的実験手法にて病態の表現型を決定した。 GVHD発症マウスは全て10日以内に死亡し、各マウス群の血清中におけるALT/ASTといったアミノ酸代謝酵素が上昇し、肝障害の発症が示唆された。一方でIL-6レセプターのアンタゴニスト抗体を用いてIL-6シグナルを遮断した群ではマウスの病態抑制と生存の維持が見られ、血清中のALT/AST値も抑制されている事を確認した。病態の観察を詳細に行ったところ、GVHDマウスは、ナイーブCD4T細胞を移入後、眼瞼の炎症をはじめ、毛並の乱れ、下痢・血便、行動の低下などの典型的なGVHDの兆候が見られた。組織染色の結果、肝臓細胞にも異常が起きていることが確認され、このような臓器不全がマウスに死をもたらしていると推測される。 CD4T細胞のT細胞レセプターのレパトアをスクリーニングしたところ、TCRのVbeta3を持つ細胞群が優位に増殖していることが明らかとなった。移入する前のVbeta3陽性CD4T細胞は全体の6%程であったが、GVHDマウスのいずれのリンパ器官でも50%以上の高いパーセンテージが確認された。 今回の研究により、サイトカイン及び免疫バランスの破綻がCD4ヘルパーT細胞の異常をもたらし、病態が発症することが証明された。当初の研究計画よりも研究を進める事ができたが、今後もさらに詳細なThサブセットの偏向や免役バランスの破綻を明確にし、またT細胞以外の細胞群へのIL-6の関与を検討する予定である。
|