2009 Fiscal Year Annual Research Report
酸素結束シスデカリン-マクロライド融合天然物の合成と抗菌活性のスイッチング
Project/Area Number |
09J00293
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
松丸 尊紀 Kitasato University, 感染制御科学, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 天然物 / 全合成 / 嫌気性菌 / コロラドシン / ナルゲニシン / ノダスミシン |
Research Abstract |
ルミナミシンは北里研究所の大村らによって、Streptomyce sp.OMR-59株の培養液から抗嫌気性菌活性を示す化合物として見いだされた。この活性の標的となるグラム陽性の偏性嫌気性菌、Clostridium difficileは偽膜性大腸炎や中毒性巨大結腸症などを引き起こすとされているため、ここ数年の間に大変危険な菌として警戒されている。一方、ルミナミシンのシスデカリン骨格部分はナルゲニシン、ノダスミシン等の天然物と類似しており、それらは抗好気性菌活性を有していることが報告されている。しかしながらルミナミシンに抗好気性菌活性は無く、抗嫌気性菌活性を有するためその活性の差異に興味が持たれる。そこで、本研究では最終到達点を抗嫌気性菌抗生物質の創製に定め、抗嫌気性菌活性を有するルミナミシンの収束的な全合成を達成すること、また全合成過程や天然物の誘導化並びに分解実験より得られる合成中間体・誘導体・分解物の活性評価を行うことで類似天然物とルミナミシンの抗菌活性の差異について詳細に検討する事を計画している。 現在までに、合成困難であると考えられた(1)無水マレイン酸に共役したエノールエーテル骨格、(2)酸素結束構造を含むシスデカリン骨格という2つの重要構造の合成を行っている。まず(1)についてはこれまで合成の報告例の無いビニルスズエーテル化合物とマレイン酸誘導体を用いた分子間Stilleカップリングを用いることで構築している。(2)についてはβ-ケトエステルと共役アルデヒドを有する化合物における分子内の連続的Michael, aldol反応を用いてシスデカリン骨格を含む3環性化合物を構築するとともに、新規の分子内酸化的エーテル化反応を開発する事によって酸素結束構造を構築している。以上のように本年度は新規性の高い反応の開発等の研究を展開している点で、有機合成化学に対して大きく寄与したと考えている。
|
Research Products
(4 results)