2009 Fiscal Year Annual Research Report
不活性結合切断による新規炭素-炭素結合形成反応の開発と反応機構の解明に関する研究
Project/Area Number |
09J00295
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 聡 Osaka University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 炭素-水素結合切断 / 一酸化炭素 / ルテニウム / 配向基 / カルボニル化反応 / 直接官能基化 |
Research Abstract |
これまで芳香族カルボン酸誘導体の位置選択的な炭素-水素結合の直接カルボニル化反応はほとんど例が無かった。その理由として、基質の触媒金属への配位が、一酸化炭素に阻害されていたからである。この問題を、新たに設計した2座の配向基を利用することで解決することができた。本年度は、この触媒反応の反応機構の解明と新たなカルボニル化反応の開発を行った。 1.反応機構の解明 基質とルテニウム錯体の量論反応を行い、経時変化を調べた。すると20時間後に、単一の化合物が生成した。この化合物を結晶化し単離を行うと、1つのルテニウム原子にピリジンの窒素とアミドの窒素が配位した新たな錯体を得ることができた。しかし、この段階では芳香環のオルト位の炭素-水素結合の切断は起こっていなかった。 次に得られた錯体を触媒に用いて反応を行うと、添加剤である水を存在させた条件では反応は進行するが、水を添加しない条件では全く反応が進行しなかった。反応系中での水の役割であるが、レスティングステイトにある触媒を水性ガスシフトが起こしより活性なルテニウムヒドリド種に戻す役割とルテニウム上の一酸化炭素と反応することで錯体上に空の配位場を作りより反応を起こりやすくしていると考えている。 2.新規カルボニル化反応の開発 芳香族アミド以外のアミドについて検討を行った。すると、アルケンを持つアミドでも同様の反応が進行した。更に、sp3炭素-水素結合の直接カルボニル化反応を試みたところ同様にカルボニル化反応が進行した。これまでは位置選択的なsp3炭素-水素結合の切断を経るカルボニル化反応は、ヘテロ原子の横の活性な炭素-水素結合の例しかなかったが、配向基を利用することで位置選択的にsp3炭素-水素結合の直接カルボニル化も可能となった。 この触媒サイクルを更に解明することによって、これまでに例のない直接官能基化、特にカルボニル化反応の開発が可能となる。
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Research Products
(4 results)