2009 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用と電子相関がもたらす物性の理論的研究
Project/Area Number |
09J00300
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下出 敦夫 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピン軌道相互作用 / 量子スピンHall効果 / トポロジカル絶縁体 / 電子相関 |
Research Abstract |
スピン軌道相互作用と電子相関が同程度の寄与をもつと期待される5d遷移金属酸化物Na2IrO3について,モデルの構築を行い層状量子スピンHall絶縁体(弱いトポロジカル絶縁体)であることを確かめた.また第一原理バンド計算を行い,モデルの妥当性についても議論を行った.本研究はトポロジカル絶縁体における電子相関の研究の先駆けとなっており,パイロクロア格子上のモデルなどに拡張されている.本研究はPhysical Review Letters誌に投稿された. 電子相関の効果を考えるにあたり,スレーブローター近似を用いて非磁性絶縁体(スピン液体)における表面状態について議論した.この近似では,まず平均場近似で電荷をもたないスピノンの表面状態が形成され,平均場近似を超えたゲージ揺らぎによってギャップが開くことが示される.Na2IrO3を想定した蜂の巣格子では,反強磁性秩序によるギャップ形成が先に起こるが,パイロクロア格子などのフラストレートした系では,表面状態がほとんどギャップレスの相から完全にギャップが開いた相へのクロスオーバーが観測されることが期待できる.本研究の一部は2009年秋に熊本大学で行われた日本物理学会で発表された. これまでに発見されたBi2Se3などの物質は,ギャップが大きく室温で機能するトポロジカル絶縁体として期待されるが,実験的にはSe欠損によりそのままでは絶縁体とはならない.新たなトポロジカル絶縁体の発見を目指して,BiTelの第一原理計算とモデル計算を行った.結果的には,トポロジカル絶縁体となるには実験値に倍するスピン軌道相互作用が必要であったが,空間反転対称性の破れとスピン軌道相互作用によるpolar metalという興味深い問題を提供した.
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Research Products
(3 results)