2010 Fiscal Year Annual Research Report
患者の主体的な療養参加を目指す医療の倫理的基礎づけ
Project/Area Number |
09J00304
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
圓増 文 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生命倫理 / 慢性疾患 / 療養行動の支援 / QOL / インフォームド・コンセント / 看護倫理 / 意思決定のプロセス / 医療従事者-患者関係 |
Research Abstract |
本年度は(1)QOL概念に関して生命倫理における先行研究のサーベイをした上で、本研究の立場がいかに位置づけられるかを検討すること、(2)看護倫理研究の動向をサーベイすると共に、今後の看護倫理研究の課題を明らかにすること、(3)インフォームド・コンセント取得の業務に携わる看護師への聞き取りを通じて医療従事者と患者の意思疎通に関わる現状を把握し整理することを行った。 (1)の作業を通じて以下のことを明らかにした。まず、QOLが医療において用いられる文脈は、(a)治療が患者の利益になると見なされる文脈と、(b)そうは見なされず、治療することとしないことのいずれがよりよいのかが問題として提起される文脈との二つに分けられること、次に、療養行動の支援は(a)の文脈に該当するということ、ただしこの文脈でのQOL理解も一様ではなく、大きく四種類の理解があるということである。この作業は現在も継続中であり、次年度にはその成果を論文にまとめ、関連学会誌に投稿する予定である。(2)では次のことを明らかにした。第一に、昨今の議論では看護倫理の独自性を強調する傾向が強いこと、しかし第二に、医療現場の現状を踏まえるならこうした傾向は好ましいものではなく、今後の課題として他の医療職種との共有が可能な用語を用いたアプローチの構築が求められるということである。こうした成果を日本看護倫理学会年次大会にて報告した。(3)については、以下のことを明らかにした。すなわちインフォームド・コンセント取得という観点から、医療現場では単なる医療従事者から患者への一方向の情報伝達ではなく、双方向のコミュニケーションの重要性が従来から指摘されているが、様々な要因によってその実現が容易ではないこと、しかしそうした要因を取り除く取り組みが行われているということである。こうした成果の一部を日本医学哲学・倫理学会年次大会にて発表した。
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Research Products
(4 results)