2009 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光を発する半導体超微粒子の電子移動機構とその応用
Project/Area Number |
09J00348
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上松 太郎 Osaka University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 半導体超微粒子 / 量子ドット蛍光体 / カルコパイライト / バイオセンサー / 光電子移動 / 蛍光消光 / ZnS-AgInS_2 / CdTe |
Research Abstract |
本研究は、半導体超微粒子の蛍光を利用した新規な電気化学デバイスの構築を目的とし、種々のレドックス種の添加による粒子の光電子移動による蛍光消光について調査した。CdTe超微粒子に関する研究から、消光には粒子および消光剤の電位と、両種の間にはたらく静電相互作用が大きく影響していることが明らかになった。また、近年我々のグループは毒性の低い新規な半導体超微粒子、ZnS-AgInS_2固溶体超微粒子(通称ZAIS超微粒子)の合成に成功しており、量子収率も50%程度まで向上した。そこで、ZAIS超微粒子の蛍光を用いた物質のセンシングを試みた。 まず、物質の電荷による静電相互作用が蛍光消光に大きく影響することを利用しようと考え、酸化還元によって価数が変化する消光剤を探索した。その結果、フェロセンやフェナジンの誘導体は酸化体のみが強い消光作用を示し、還元体はほとんど消光させないことが明らかになった。それらの物質の酸化状態を酵素反応によって制御することで、基質の添加によって蛍光発光するバイオセンサーを作製することに成功した。作製したセンサーは、電気化学型のバイオセンサーと比較してはるかに低い検出限界を有している。また、紫外光源さえあれば測定物質濃度を蛍光発光強度として目視で確認することができる。 続いて、粒子および消光剤の電位が消光に与える影響について研究を進めていくと、有機物の中でも還元電位が卑な9-アミノアクリジンの消光作用は、ZAIS超微粒子の固溶比(ZnS/AgInS_2)に影響され、ZnSが含まれていないとまったく消光を示さず、ZnS比が多くなればなるほど消光作用が強くなることがわかった。ZnSが多いとバンドギャップは広くなるので、電子伝導帯下端の電位も負側にシフトすると考えられ、それによって粒子から消光剤への電子移動が可能になったと考えられる。この結果は、蛍光強度によって物質の酸化還元電位を計る新しい技術の基礎となるものと考えられる。
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Research Products
(8 results)