2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00418
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥崎 穣 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 形質置換 / 体サイズ / 生活史 / オサムシ / ミミズ |
Research Abstract |
本研究は、地表俳徊性昆虫のヒメオサムシの九州地方における著しい体サイズ変異をもたらす要因を特定することを目的とする。申請者は、気温、近縁種、餌サイズがヒメオサムシの体サイズに与えるという仮説のもと、九州で調査を行ってきた。 22年度は、九州各地でヒメオサムシを採集し、その体サイズと年平均気温及び近縁種の関係を解析した。まず、ヒメオサムシの体サイズは、温暖な地域ほど大きかった。さらに、この気温の効果とは独立して、ヒメオサムシは大型の近縁種がいない地域で顕著に大型化しており、形質置換パターンを示した。 22年度は、年平均気温(標高)の異なる地域で、ヒメオサムシの生活史とミミズのサイズ動態について4月から11月、3月に週2回調査を行った。ヒメオサムシは、温暖な地域では4月に繁殖を開始し、9月に休眠に入った。一方、寒冷な地域では5月に繁殖を開始し、10月に休眠した。従って、気温は、本種の生活史(繁殖期と幼虫の成長期)の長さには影響しないことが示された。一方、ミミズは調査期間を通して活動していた。そして、温暖な地域ほど、幼虫の成長期である6・8月に、ミミズのサイズ(体重)が大きかった。 これらの結果から、ヒメオサムシの単独分布域での大型化は、近縁種との種間相互作用(競争あるいは繁殖干渉)から解放された後の餌への適応から生じたと考えられる。すなわち、本種の体サイズ変異要因として、気温は間接的、近縁種と餌サイズが直接的であると推測された。 今後、21年度と22年度の研究を論文にまとめながら、ヒメオサムシの分布形成過程と体サイズの遺伝率を分子実験と飼育から明らかにする。
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