2009 Fiscal Year Annual Research Report
呉・越・徐・舒と楚―特に秦末漢初の騒乱における役割から―
Project/Area Number |
09J00451
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 麻衣子 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鄂君啓節 / 楚 / 越 / 淮夷 / 江淮 / 江東 |
Research Abstract |
1論文「鄂君啓節からみた楚の東漸」を『東洋史研究』第68巻第2号に発表した。本論文では、鄂君啓節に示された免税区域をもとに、文献の記述を詳細に検討し、戦国中期における楚の勢力範囲を明らかにすることによって、東方においては、下蔡・居巣・樅陽までが、前322年の段階における楚にとっての安全圏であったこと、それ以東の地域には、なお越や淮夷の勢力が存在していたこと、を確認した。また、それに基づき、のちの秦末漢初の騒乱(反秦戦争)や呉楚七国の乱の舞台となる長江・淮河下流地域に対計する楚の進出が、戦国後期に降ることを明らかにした。以上により、淮夷や越の存在に留意せず、戦国中計期にはすでに楚が江淮の間ならびに江東を支配していたとする従来の観点を正し、中国古代史上における二大反乱に地域的特質を見いだしうる可能性を指摘した。2指導委託により、上海・復旦大学において、歴史地理学研究中心の李暁傑教授に師事し、歴史地理学を学ぶと同時に、同大学文物与博物館学系の呂静副教授ひきいる江蘇省鎮・揚・常三市文物遺址考察小組にも参加、さらには自身でも独自に各地の博物館・遺跡をめぐり、楚・呉・越・徐・舒に関する史料を収集、各博物館の研究員の方々からも、未公表情報を含め、貴重なご意見をいただいた。これらは今後の研究にとって必要不可欠なものであり、いずれ研究成果として発表する予定である。なお、本年度には、鎮江博物館・揚州博物館・漢広陵王墓・常州博物館・春秋淹城遺址・武進博物館・上海博物館・印山越王陵・越国文化博物館・紹興県博物館・紹興越国文化博物館・紹興博物館・河姆渡遺跡博物館・寧波博物館・淮安市博物館・安徽省博物館を調査した。
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