2010 Fiscal Year Annual Research Report
アリ-カイガラムシ-オオバギ三者共生系に生じる利害関係の解明
Project/Area Number |
09J00458
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
半田 千尋 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アリ / アリ植物 / オオバギ(Macaranga) / カイガラムシ / 共生 / 相利 / 東南アジア / 熱帯雨林 |
Research Abstract |
私はこれまで、茎内に共生させたアリに防衛を依存するアリ植物オオバギとその茎内に共生するアリおよびカイガラムシの三者共生系を対象として「生態が未解明であるカイガラムシの本系における役割を明らかにする」と共に、「三者共生系が存続する機構を解明すること」を目的として研究を進めてきた。 これまでに、マレーシア、サラワク州、ランビルヒルズ国立公園の栽培施設内において、オオバギ実生株を用い、カイガラムシの有無を操作する実験を行った。具体的には、アリのみが存在するオオバギ実生株を用いて、一部の株にカイガラムシを導入する処理を行い、残りの株をコントロールとしてアリのみが存在する状態を維持して栽培を続けた「2010年度は、それらの実験株を切り倒してデータ採取を行った。その結果、アリ・カイガラムシ・オオバギ三者共生系の存続においてカイガラムシが重要である可能性が示唆された。 また、アリ植物オオバギ茎内にカイガラムシがどのようにして共生を開始するのかを明らかにするために、これまでに、オオバギの樹冠部に粘着性シートを設置して微小昆虫を採集してきた。2010年度、それらの微小昆虫のDNAを解析した結果、採集された微小昆虫の一部が共生カイガラムシであることが確認され、カイガラムシの若齢幼虫が風に運ばれて分散していることが確かめられた。 次に、アリ植物オオバギ上においてアリがどのようなカイガラムシを受け入れているのかを示すために、共生カイガラムシ、または、まれに葉や茎外部に寄生する非共生性のカイガラムシをオオバギ上に提示し、共生アリの行動観察を行った。その結果、アリは、共生カイガラムシを選択的に巣内に運び入れて共生させていることが判明した。
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