2010 Fiscal Year Annual Research Report
先史アンデス文明における祭祀建造物と社会変化の動態的相互関係
Project/Area Number |
09J00490
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山本 睦 埼玉大学, 教養学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | アンデス / 形成期 / 祭祀建造物 / 地域間ルート / 地域間交流 / 社会変化 |
Research Abstract |
本研究目的は、先史アンデス形成期(紀元前2500-0)におけるペルー北部ワンカバンバ河谷の社会過程の解明である。具体的には、社会統合の核とされる祭祀建造物が、社会変化に際して果たした役割とその社会的位置づけの究明を通じて、祭祀建造物と社会変化の動態的相互関係を捉えることである。ワンカバンバ河谷は、現在まで考古学調査がほとんどなく、地域単位での社会変化を解明するにはデータが不十分である。また、隣接地域との地域間関係の究明には、考古資料の類似性だけでなく、遺跡分布や地形や生態環境をふまえた地域間ルートの検証が必要である。したがって、上記の問題に取り組むため、8月~9月にかけて渡航し、これまでの発掘資料の整理・分析作業を行うとともに、とくにワンカバンバ河谷以北の地域で遺跡分布調査を重点的に実施した。その結果、昨年度より継続する周辺地域の遺跡分布調査データの充実によって、前年度までに確立したワンカバンバ河谷の考古学編年を検証し、精緻化することができた。また、遺跡分布調査のデータに基づいて、GIS(地理情報システム)によるペルー北部地域の地域間ルートの分析を進めた。そして、形成期における地域間ルートの時期的変遷と社会変化との相互関係が次第に明らかとなってきた。この成果が、今後の調査研究に不可欠なことはもちろんであるが、なかでも、GISによるルート分析は、アンデス形成期に先行例がみられないため、その意義は非常に大きいものと考えられる。なお、日本では、前年度に続いてワンカバンバ河谷の諸遺跡のデジタルデータを用いて、遺跡間の空間的関係を定量的に分析し、祭祀建造物と社会変化の動態的な相互関係の解明に取り組んでいる。また、これまでに作成した図面のデジタル化を進めるほか、研究の理論的枠組を構築するため、関連文献を渉猟している。
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Research Products
(2 results)