2009 Fiscal Year Annual Research Report
古細菌ゲノムの情報学的解析を基盤としたtRNA遺伝子の起源と進化の探求
Project/Area Number |
09J00524
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菅原 潤一 Keio University, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | tRNA / 古細菌 / ゲノムインフォマティクス / 分子進化 / イントロン / トランス-スプライシング |
Research Abstract |
Transfer RNA(tRNA)は,生物のタンパク質合成系においてmessenger RNAのコドンとアミノ酸を対応させる役割を担う小分子である.本分子は,遺伝暗号や遺伝子の起源と進化を考察する上で極めて重要な研究対象として認識されている.しかしながら,tRNA遺伝子の情報は現在,古細菌を中心に著しく不足している.これは既存のソフトウェアが,古細菌などで報告されている断片化されたtRNA遺伝子(イントロン介在型,Split型,Permuted型)をゲノム配列から正確に予測できなかったことに起因する.これにより,これまでtRNA遺伝子配列を用いて構築された進化系統樹およびそこから考察された結論は,真性細菌や真核生物のデータに大きく偏ったものであった. そこで本研究では,我々が過去に開発した断片化tRNA遺伝子予測ソフトウェアであるSPLITSを用いて,古細菌全ゲノム配列(合計58種)を対象にtRNA遺伝子の予測をおこなった.この結果,計2,607のtRNA遺伝子配列を取得した.また,これらのtRNA遺伝子情報を円滑に管理/公開し,必要な情報のみを取得可能なインターフェースとして,断片化tRNA遺伝子ウェブデータベース「SPLITSdb(http://splits.iab.keio.ac.jp/splitsdb/)」を開発した.さらに,上記tRNA遺伝子情報を進化系統的に解析し,tRNA遺伝子の断片化という事象が進化的に後天的に発生した可能性を示唆した. 本研究成果は,これまで古細菌を中心に著しく不足していたtRNA遺伝子情報を補うものであると同時に,近年注目が集まっていた断片化tRNA遺伝子に関する起源と進化の様相の一端を明らかにしたものである.
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