2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00540
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南谷 英美 Osaka University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | STM / 近藤効果 / 2不純物近藤効果 / 数値くりこみ群 / RKKY相互作用 |
Research Abstract |
金属表面上の磁性ダイマーにおけるSTM観察にて現れる、近藤効果とRKKY相互作用の影響をSTSスペクトルの変化について数値くりこみ群を援用して計算を行い理論的に研究した。 まず、磁性原子間距離が変化すると、Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida(RKKY)相互作用の符号と大きさが変わり、STSスペクトルに現れるピーク形状が変化することが判明した。強磁性RKKY相互作用が働く場合には、フェルミレベル近傍のピーク形状が鋭くなる。これは磁性原子のスピン間に働く強磁性相互作用により有効な近藤温度が低下していることを示唆している。反強磁性RKKY相互作用が働く場合のピーク形状の変化の仕方は、磁性原子局在電子状態と金属表面電子状態間の混成の大きさによって変わることを発見した。混成の大きさは近藤効果のエネルギースケールである近藤温度とRKKY相互作用の大きさに関係し、近藤効果とRKKY相互作用の影響のうちどちらが支配的であるかを決める。混成が大きい場合、近藤効果が支配的であり、反強磁性RKKY相互作用が存在してもピーク形状はブロードになるだけである。しかし、混成を小さくし、反強磁性RKKY相互作用を支配的にすると、STSスペクトルにディップ形状が現れる。1粒子励起スペクトルとスピン相関関数の計算から、このディップ形状がパリティ分裂と局在スピン間の強い反強磁性相関に起因することを明らかにした。 また、位相シフトの計算と電子-正孔対称なハミルトニアンに基づく計算の比較から、磁性ダイマー吸着系のSTSスペクトルにおけるピーク幅・ピーク高さの漸次的な変化は、ハミルトニアンに含まれるエネルギーに依存する項による電子-正孔対称性の崩れによって量子臨界点が消失し、近藤領域と反強磁性領域の間がクロスオーバーによってつながれていることに由来することが判明した。 以上の結果から、表面系における2不純物近藤効果の実空間観察が可能であることを示した。
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Research Products
(6 results)