2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00563
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 綾 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 忠義水滸伝解 / 金聖歎本 / 陶山南涛 / 鳥山輔昌 / 忠義水滸伝抄訳 / 百二十回本 / 忠義水滸伝鈔訳 / 底本 |
Research Abstract |
23年度には、22年度に引き続き、日本近世期における『水滸伝』金聖歎本受容の様相についての研究を進めた。 22年度には、近世の『水滸伝』受容に大きな役割を果たした陶山南涛の辞書『忠義水滸伝解』が、自らの記載である凡例の事実と異なり、金聖歎本を底本に使用していることを指摘したが、23年度は『忠義水滸伝解』の続編と見なされてきた語釈書や、それに連なるものとされる写本について、使用された『水滸伝』テキストの調査及び南涛との関連性を考察した。 その結果、南涛の続編と見られる鳥山輔昌の刊本『忠義水滸伝抄訳』は、本の体裁は『忠義水滸伝解』と全く同一であり、書肆が南涛の続編というスタンスで刊行したことは明らかであるが、その内容は、南涛の『水滸伝』解釈に連なるものとは考えがたいという結論に達した。 また、南涛の講義に連なると目されてきた写本『忠義水滸伝鈔訳』も存在するが、こちらは南涛と同じ方針で『水滸伝』を解釈する姿勢も見受けられる。しかし、使用された底本は、『忠義水滸伝解』で南涛が使用した金聖歎本に加え、写本では南涛が使用することのなかった百二十回本も同時に用いられているため、やはり同一講義の記載内容と断言することには慎重になる必要がある。 このように、これまで序文に記された内容のみでつながりが指摘されてきた様々な資料であるが、内容を検証することにより新たな関係を指摘した。また、同時に、近世期に金聖歎本が流布していく状況もこれらの資料から読み取れることも論じた。
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Research Products
(2 results)