2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00761
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小澤 真 The University of Tokyo, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トリスタン・コルビエール / フランス / 19世紀 / 韻律論 / アポストロフ / バランセル / 文体論 / アレクサンドラン |
Research Abstract |
19世紀フランスの詩人トリスタン・コルビエール(Tristan Corbiere)の残した韻文作品を、韻律という観点から分析・再評価した。本年度に扱った作品は「バンビーヌ」(《Bambine》)と「バランセル」(《Ballancelle》)という、どちらもアポストロフ記号を多用した奇異な文体によって書かれた詩である。まず、「バンビーヌ」の韻律分析によって、この詩がコルビエールの省略的語法(アポストロフによる母音の省略等)という詩人の特色をよく表現したものであることを指摘した。コルビエールは伝統的な文学ジャンルに属する詩句である十二音綴詩句に、俗的(シャンソン的)なアポストロフによる省略を混在させることで、船乗りの生き生きとした言葉を表現している。さらに、詩人はこうしたアポストロフに、感嘆符やティレなどの記号を併用することにより、一行の詩句を内部で分断してしまう。これらは、海の男たちの会話の息吹を表現するための手法である、ということもできよう。また、「バランセル」の分析においては、この長大な十二音綴によって書かれた詩が、アポストロフ記号によって分断され、通常の韻文よりも遥かに多い語を詰め込むことにより、十二音綴詩句の拘束を乗り越えようという詩人の試みであったことを指摘した。なお、以上の分析においては、19世紀のアポストロフ記号に特色のあるテクスト(主に俗文学)を引用し、フランス語文学作品におけるアポスロトフ記号の役割の考察も同時に行っている。アポストロフを多用する傾向のある俗文学のテクストと比較しても、コルビエールのアポストロフの濫用はひときわ破格的であった。
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Research Products
(2 results)