2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00764
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 実 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ゼニゴケ / 葉緑体 / 母性遺伝 / シグマ因子 |
Research Abstract |
(1)ゼニゴケを用いた葉緑体ゲノムの母性遺伝異常変異体の選抜 野生株を父方とし、葉緑体形質転換体を母方として交配した後代(胞子)、つまり、葉緑体ゲノムにスペクチノマイシン耐性遺伝子をコードする胞子に対し核ゲノムの形質転換を行いT-DNAタグラインを作出した。現在、作出したタグラインの雄株を野生型の雌株と交配し、得られた後代をスペクチノマイシン含有選抜培地に生育させ、父方から葉緑体ゲノムが伝達している変異体を探索中である。 (2)ゼニゴケシグマ因子MpSIG1の解析 母性遺伝のスクリーニングに準備したタグラインの中から、TAIL-PCRを行ったところ、ゼニゴケ核ゲノムにコードされている3つのシグマ因子のうち(SIG1,SIG2,SIG5)、SIG1(MpSIG1)を破壊しているT-DNA変異体を同定したので、母性遺伝のスクリーニングに平行してこの変異体の解析も行った。シロイヌナズナではMpsig1T-DNA挿入変異体は野生株と変わらず、目立った形態的な変化は見られなかった。Mpsig1T-DNA挿入変異体を用いた遺伝子発現解析からMpsig1はイネのSIG1で報告されているのと同様、psaA、psbB、psbEオペロン上の遺伝子の発現量が減少していた。更にndhF遺伝子や、2つのオペロン、psbKとpetLオペロン上の遺伝子の発現量も減少していた。これらの遺伝子の発現量の減少は、Mpsig1T-DNA挿入変異を相補する個体で野生株並みに回復していた。以上のことから、SIG1が制御する遺伝子は、コケ植物誕生時に規定され始めてはいたものの、他のシグマ因子と機能が重複しており、被子植物が分化していく中で、それぞれのシグマ因子のより明瞭な機能分化が起こっていったことが示唆された。
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