2009 Fiscal Year Annual Research Report
社会教育における労働と生活の調和に関する研究-過労死問題に取り組む遺族を対象に-
Project/Area Number |
09J00779
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
池谷 美衣子 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会教育 / 過労死 / 遺族 / 変容 |
Research Abstract |
本研究は、労働組合の弱体化後に顕在化してきた労働と生活の調和という新たな社会的課題に対し社会教育研究が取り組んでいくための新たな研究視角を理論的・実証的に提示することを目的するものである。具体的には、企業の外側から問題の可視化に取り組んでいる社会運動として、過労死問題の遺族による取り組みを対象とする。 本年度は、第一に、資料調査およびインタビュー調査通じて夫を亡くした遺族(妻)が夫の死に直面してから遺族代表として全国的な活動を担うまでの遺族の変容過程を解明する事例研究に取り組み成果をまとめた。そこでは、遺族が夫の死後に企業と交渉を続けた背後には夫の死後も企業への根強い信頼感を有していたこと、企業との交渉が決裂し企業と距離を置くことで夫の死をとらえ返し、裁判を通じて夫の死を社会問題として認識していったこと、他の過労死遺族と関わるなかで遺族の孤立化の克服という点に遺族組織の存在意義を見出していったことが明らかになった。第二に、遺族の現在の状況と遺族組織の活動への参加状況および遺族組織に対する考えを明らかにするために、遺族組織の会員に対して調査票による悉皆調査を実施した。 以上をふまえ、次年度では量的調査から過労死遺族の行動プロセスと遺族組織内における遺族間の相互支援の内実を解明し、遺族となった会員が立ち直っていく過程において他遺族および遺族組織が果たしている役割を明らかにする。また、遺族による相互支援や遺族組織の果たす役割をより具体的に明らかにするために、本年度とは異なる属性を有する事例を抽出し事例研究を行う。
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Research Products
(1 results)