2009 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙大規模構造の重力非線形進化に対する有質量ニュートリノの影響
Project/Area Number |
09J00784
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 俊 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ニュートリノ質量 / バリオン振動 / 銀河パワースペクトル / 重力の非線形進化 / 銀河バイアス |
Research Abstract |
ニュートリノが有限の質量をもつことは、地上のニュートリノ振動実験により明らかにされ、素粒子標準模型を超える物理の存在を示唆するという意味で注目を集めている。宇宙論的観測はニュートリノ質量の(総和)の絶対値をプローブできるだけでなく地上実験よりも厳しい制限を与えており、ニュートリノの質量を決定する上で非常に強力な手段である。 本研究では、銀河のクラスタリング分布の進化に有質量ニュートリノが与える影響について考察した。特に銀河分布の重力非線形進化に対して有質量ニュートリノが与える影響を、摂動論的アプローチに基づき定式化し、銀河の非線形パワースペクトルを簡単かつ高速に計算する方法を与えた。またこの定式化に基づき、銀河サーベイの主目的であるダークエネルギーパラメータの制限に対して、ニュートリノ質量の効果を無視することによる系統誤差を評価した。本研究により、高精度な将来の観測計画ではニュートリノ質量を0として扱うことによってダークエネルギーパラメータの制限の結果を優位にバイアスしうることを示した。 さらに、上記の理論予言を実存のデータであるSloan Digital Sky Survey(SDSS)の銀河サンプルに適用し、宇宙マイクロ波背景輻射の温度ゆらぎ・偏光のデータであるWMAP5と組み合わせることにより、Σmν<0.67eV(95%C.L.)というニュートリノ質量の制限を得た。これは地上実験の制限(<6eV)よりも十分厳しく、さらにWMAP5のみの制限よりも約2.3倍厳しい制限である。
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Research Products
(13 results)