2010 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙大規模構造の重力非線形進化に対する有質量ニュートリノの影響
Project/Area Number |
09J00784
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 俊 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 銀河のクラスタリング分布 / ニュートリノ質量 / バリオン振動 / 重力の非線形進化 / 銀河バイアス / 赤方偏移ゆがみ |
Research Abstract |
ニュートリノが有限の質量をもつことは、地上のニュートリノ振動実験により明らかにされ、素粒子標準模型を超える物理の存在を示唆するという意味で注目を集めている。宇宙論的観測はニュートリノ質量の(総和)の絶対値をプローブできるだけでなく地上実験よりも厳しい制限を与えており、ニュートリノの質量を決定する上で非常に強力な手段である。 本研究では、銀河のクラスタリング分布の進化に有質量ニュートリノが与える影響について考察した先攻研究に基づいて、実存のデータであるSloan Digital Sky Suryey (SDSS)の銀河サンプルに我々の理論モデルを適用し、宇宙マイクロ波背景輻射の温度ゆらぎ・偏光のデータであるWMAP5と組み合わせることにより、Σmν<0.81eV(95%C.L)というニュートリノ質量の制限を得た。特に、我々の方法がロバストな制限になっていることを、シミュレーションによるデータと比較することによって詳細に検討した。 また、銀河のクラスタリング分布の理論予言における問題の一つである、赤方偏移ゆがみの問題に対して、摂動論を用いた解析的アプローチにより、高精度な理論予言を可能にした。さらにこの精密な理論予言を用いて、どのようにすれば非等方な銀河クラスタリング分布のパワースペクトルからロバストかつ強力に宇宙論的情報を取り出す事ができるかについて考察した.我々の計算により、4次までのLegendre展開までで非等方な銀河パワースペクトルの情報はほぼ尽きていることが示され、パワースペクトル解析を簡易にすることに非常に有用な結果となった。
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Research Products
(11 results)