2010 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスのシティズンシップ教育政策にみるナショナル・アイデンティティの再構築
Project/Area Number |
09J00826
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉田 かおり 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シティズンシップ / 教育政策 / ナショナル・アイデンティティ / イギリス(連合王国) |
Research Abstract |
グローバル化に伴う人の移動の増大により、多様な民族・文化的背景をもつ子どもたちが一国内に増加している。そこで問題となるのは民族・文化的要素を強調した「国民」を育成する教育であり、現在はそれを問い直す必要に迫られている。本研究では「シティズンシップ」概念に着目し、「ネイション」と結びついたシティズンシップをどのように解きほぐすのか、という問いについて考察する。具体的には、イギリス(連合王国)のシティズンシップ政策を分析対象とする。 本年度は、これまでに行った文献研究及び現地調査をもとにした研究成果の公表に努めた。学会発表については、世界比較教育学会(6月14~18日/於:イスタンブール・トルコ)及び日本比較教育学会(6月26・27日/於:神戸大学)において行った。発表においては、イングランドにおけるシティズンシップ教育政策の策定過程において、「ナショナル・アイデンティティ」がどのように解釈されたのか、関係者間の認識の相違に着目しながら明らかにした。投稿論文については、現在査読中である。 これらの成果をまとめる中で、今後の課題が浮き彫りとなった。まず、イングランドにおけるシティズンシップ教育政策と移民政策との関連がまだ十分に明らかにできていない点である。労働党政権下のシティズンシップ教育政策と移民政策は「国民」形成に大きく関連しており、それぞれの政策過程における「ネイション」に関する議論を分析することが今後の研究において必要となると考える。次に、イングランド以外の地域(ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)におけるシティズンシップ教育政策の多様性を十分に明らかにできていない点である。これらの地域については、教育政策の策定過程に関する資料の収集もまだ十分ではないことから、継続して作業を行っていく必要があると考える。
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Research Products
(2 results)