2009 Fiscal Year Annual Research Report
十九世紀前半のフランスにおける絵画と演劇の相互関係の研究
Project/Area Number |
09J00847
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西嶋 亜美 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 十九世紀フランス / ドラクロワ / 絵画と演劇 / 美術批評 |
Research Abstract |
本年度は、修士課程に引き続きドラクロワの文学主題作品の考察から始め、主に以下の三つの成果を得た。 1、平成21年9月の美術史学会西支部例会において口頭発表『ドラクロワ作「墓地のハムレットとホレーシオ」-フランスにおけるシェークスピア受容との関連から-』を行った。これは十八世紀以来のフランスにおけるシェークスピア受容、様々な翻訳と翻案、英独仏の先行作例の比較考察を通じ、なぜドラクロワが構図の異なる複数作品として同場面を表したのか、という疑問に答えるものである。国内外で関連する絵画・演劇批評を網羅的に調査し、演劇関連の画像資料も参照したことは、絵画と演劇の関連を探る研究の出発点としてきわめて有効であり、学会誌『美術史』への投稿を予定している。2、同画家の《ファウスト》連作について論文「ドラクロワによる「挿絵」連作《ファウスト》-多様な着想源と技法革新の統合の試み-」(平成22年4月刊行の『京都美学美術史学』受理済)を執筆した。ゲーテ前後の「ファウスト」に関わる諸芸術作品との比較考察からドラクロワ作品の表現様式と場面選択における特異性を明らかにし、ロンドンで画家が観たオペラ風の翻案『フォースタス』(ジョージ・ソーン作、1825年初演)の舞台の再構成によりこの特異性を説明すると共に、国内外で黎明期のリトグラフ作例や関連資料を調査し、ドラクロワが新技術の特色を存分に生かすことで、テキストとの連続性を保った画家の創造性の表出として本連作を仕上げ得たことを明らかにした。3、十九世紀初頭の美術理論分析の一端として、カトルメール・ド・カンシーが1823年に発表した模倣理論における演劇の位置づけについて分析し、平成22年3月に京都大学大学院文学研究科に研究報告書として提出した。
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