2010 Fiscal Year Annual Research Report
十九世紀前半のフランスにおける絵画と演劇の相互関係の研究
Project/Area Number |
09J00847
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西嶋 亜美 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 十九世紀フランス / ドラクロワ / 絵画と演劇 / 美術批評 / クールベ / 版画 |
Research Abstract |
平成22年度には、ロマン主義的な文学・戯曲に基づく作品に加え、扱う主題を古典古代や現代を描くものに拡げた。10月以降はパリ第四大学美術史考古学研究所に招待研究員として受け入れて頂き、パリを拠点に各地で実作品の調査に本格的に取り組んでいる。まとまった成果は以下の二点である。 1、ドラクロワ作《怒れるメディア》(1838年、リール美術館)の生成と受容について考察した。本作品はドラクロワが初めてサロンに展示した古典古代の物語に基づく作品である。本研究では場面選択の工夫と受容のあり方を、当時の古典劇の受容を視野に入れて読み解き、「古典古代」を表現する際に、同時代に通じる自然な感情の表象が重視されていたことを示した点が重要である。具体的には複数の戯曲テキストや同物語を描いた先行作例の調査、美術批評および演劇批評の精読を行った。一度七月に京都大学大学院文学研究科の大学院演習で報告したのちに、より深めて論文にまとめるために研究を続行中である。 2、七月王政期(1830-48)のパリで制作された絵画および版画の恋人表象を分析した。より具体的には、パリに加えフランクフルト、モンペリエ、リヨン等の美術館所蔵の絵画作品と資料を実地調査するとともに、国立図書館の版画コレクションから19世紀のカップルのイメージを洗い出し、また同時代の男女関係に関する資料を調査して、恋愛観とそれを効果的に表すために用いられた手法を読み解いた。ワルツという参加型のダンスの図像と物語画のコードが、現実のカップルの自然な感情の表出をよりよく伝える有益な方法であったことを指摘することが出来た。本研究は「クールベ作《田園の恋人》と19世紀中盤の「現実の」恋人たち」として京都大学グローバルCOE「親密圏と公共圏の再編成のためのアジア拠点」内の次世代ユニット成果報告書「西洋絵画における親密なる男女の表象(代表:中田明日佳)」に掲載され刊行される。約一年後には査読を経て共著書籍として出版する計画がある。
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Research Products
(1 results)