2010 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザーによる膜電位操作と細胞ネットワークの光シグナル制御
Project/Area Number |
09J00907
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安藤 潤 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フェムト秒レーザー / 多焦点顕微鏡 / ラマン分光法 |
Research Abstract |
本研究は、超短パルスレーザー照射によって引き起こされる細胞の生体反応を利用して細胞膜電位を変化させ、生体組織内部で働く細胞ネットワーク間のコミュニケーションを自在に操作する技術の開発を目的としている。当該研究代表者のこれまでの研究から、フェムト秒レーザー照射によって細胞膜電位が過分極や脱分極を引き起こす事が明らかとなった。光照射による膜電位変化を用いて、組織中の細胞同士のシグナル伝達を自在に制御する技術を確立する為には、レーザー照射下における細胞や細胞ネットワークの生体反応、さらにはレーザー照射による細胞の構造変化を分子レベルで高速に観察する必要がある。そこで、本年度は、昨年度に引き続き多焦点顕微鏡の設計・試作を行った。生体分子の観察には、分子振動から試料内部の分子を直接同定・検出するラマン分光法を用いた。本年度は特に、レーザー照射による膜穴形成過程に追従するため、ラマン分光イメージングの高速化に取り組んだ。多焦点顕微鏡の分光画像検出部に高速連続撮像が可能なEM-CCDを採用し、ガルバノミラーによる走査とCCD撮像のタイミングを同期させる事で、ラマン分光イメージングの高速化を図った。さらに、微弱なラマン散乱を増大させ、短い露光時間でも十分な信号対雑音比でラマン散乱光を検出するため、表面近傍の分子からのラマン散乱を増大させる金属ナノ粒子を試料に導入して測定を行った。実際にHeLa細胞に金ナノ粒子を導入して観察を行ったところ、1フレーム1秒以下の高速ラマン分光イメージングが可能であると確認できた。 今回作成した顕微鏡を用いれば、フェムト秒レーザーと生体分子の相互作用が生み出す分子動態を、ありのままに、かつ高い時間分解能で観察、分析することが可能となる。今後レーザー照射前後の膜孔形成過程などの高速な分子動態を詳細に検証する事で、光による細胞機能の制御へと繋げる事が重要となる。
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Research Products
(12 results)