2009 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類の四足歩行メカニズム:不連続な模擬的樹上環境による実験的アプローチ
Project/Area Number |
09J00915
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日暮 泰男 Osaka University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 四足歩行 / 霊長類 / 運動制御 |
Research Abstract |
霊長類は比較的大型の動物であるにもかかわらず、樹上を俊敏に移動できる種が多くいる点において、稀な哺乳類集団である。霊長類の四足歩行には、手足による把持運動、体重の後方移動、そしてダイアゴナル・シーケンス歩容といった他の哺乳類には見られない特徴が報告されており、こうした特徴のすべてについて霊長類の樹上生態との関連が指摘されている。本研究では、ニホンザルの四足歩行について実験室環境における運動学的分析を中心に遂行した。目的は運動学的データからニホンザルの四足歩行における前肢および後肢の運動制御機構を推測し、先行研究の知見のあるヒトやネコの位置的行動における体肢の制御機構と比較することであった。前肢と後肢の各々を3つのセグメントに分割し、セグメント間の協調関係を主成分分析によって捉えた。ニホンザルの四足歩行において、後肢は体肢の向きと体肢の長さという2つのモジュールによって制御された。このモジュール戦略は体肢の運動制御を単純化する機構として、ヒトの二足歩行における後肢の制御やネコの四足姿勢における四肢の制御に採用されていることが知られている。これに対して、ニホンザルの四足歩行における前肢の制御は従来提示されてきた機構とは異なるものであった。結果からは次に示す2種類の前肢の制御機構が可能性として推測された。1)モジュール戦略が採用されていない。2)モジュール戦略はある(その中の一つは体肢の向きである)が、単純化には貢献しない。いずれの機構がニホンザルの前肢の制御に採用されているにしても、本研究の結果からは、霊長類の四足歩行が体肢の運動制御の点においても特異的であることが示唆される。今後は、この結論を基に新たな仮説を設定し、ニホンザル以外の霊長類種や比較対象として霊長類以外の動物について運動学的分析をおこない、仮説の検証を重ねていく必要がある。
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Research Products
(1 results)